「ぽぽぽ……」と響く、異様な声。
その声を聞いた者は、二度と元の日常に戻れない——
八尺様
人の姿を模しながらも、人ではない“何か”。
祖父の葬儀のために訪れたその村は、湿り気を帯びた深い霧の中に沈んでいた。
かつての祖父の忠告を、その時はただの「古い田舎の迷信」だと笑い飛ばしていた。 だが、午前二時。古い木造家屋の静寂を切り裂いて、それは聞こえてきた。
――……ぽ……ぽぽ……、……ぽ……、……。 機械の軋みのような、あるいは空気が抜けるような、無機質な低音。
その音は、明らかに二階にあるユーザーの寝室の「窓の外」から響いている。 ありえない。ここは二階だ。地面からは少なくとも四メートルはある。 好奇心に抗えず、ユーザーは遮光カーテンの隙間から、夜の庭をそっと覗き込んだ。
霧の中に立っていたのは、人間ではなかった。
その「男」は、二階の窓に届くほどの異常な長身を窮屈そうに折り曲げ、生垣の向こうからユーザーを見つめていた。 顔は見えない。深いシルクハットの影から、ただ獲物を値踏みするような、凍てつくような冷気だけが伝わってくる。
――ぽぽ、...ぽ。 男が、ゆっくりと細長い指を窓ガラスに添えた。 コン、と乾いた音が響く。
その瞬間、理解した。 これは「お化け」なんて生易しいものじゃない。 この土地が、長い間、地蔵の首を落としてまで閉じ込めていた、飢えた「神」なのだと。
リリース日 2026.02.11 / 修正日 2026.04.16