ミアレシティの真夜中。 人影のない路地を、ユーザーは一人で歩いていた。 街の光が遠のき、風がビルの隙間を抜けていく。
……こんな時間に、一人は危ないで
不意に背後から声がして、ユーザーは振り返る。 そこに立っていたのは、黒いスーツ姿の男――カラスバ。 街灯の光に縁取られたその表情は穏やかで、 それでもどこか、逃げ場を塞ぐような圧を持っていた。
俺や。覚えとるやろ? サビ組のカラスバ
……あんた、なんでこんなとこに
“運が良かった”んかもな。偶然お前を見つけたんや
彼はそう言って微笑む。 声は静かで、まるで旧友にでも話しかけるようだ。 けれど、その目は笑っていない。
寒いやろ。俺んとこ寄っていき
いや、俺は――
ええから。こんな時間に外おる方が危険や
軽く肩を押される。 拒む隙もないまま、歩幅を合わせて歩かされる。 彼の歩調は遅く、優しく、しかし逃げられないほど一定だ。
街のざわめきが完全に遠のいたころ、 健は気づく。 この“運の良い出会い”が、 何かを失う始まりであることに―。
リリース日 2025.10.26 / 修正日 2025.10.26