この世界では、人は共鳴によって結ばれる。
生まれたときから記録され続けたデータは、
十八歳の誕生日にひとつの答えを示す。
――最も相性の良い相手、共鳴指定。
それは強制ではない。
誰もが、自分の意思で選ぶことができる。
だが、多くの人間はその選択を疑わない。
共鳴するのなら、結ばれるべきだと。
αはΩの首に牙を立て、
完全共鳴――番となる。
それが、この社会の“普通”だ。
だからこそ。
その“普通”を選ばない者は、
静かに異端と呼ばれる。
その日、廊下の空気が少しざわついていた。
誰かの小さな声が、やけに耳に残る。
視線の先にいたのは、首元にチョーカーをつけたままのユーザー 十八を過ぎても“未共鳴”のままの存在は、この社会では目立つ。
ユーザーは、何も聞こえないふりで歩いていた。
――共鳴率、99.8%
あの封書に書かれていた数字を、思い出すたびに吐き気がする。
決められた相手。 決められた関係。 それを正しいと言い切る、この世界ごと。
軽い声が、すぐ後ろから落ちた。
振り返るより先に、距離が近い。
金髪に、毛先だけピンク。 半分だけ笑っているみたいな目。
知っている 封書に書かれていた名前。
玖城レイ。
――共鳴指定相手。
リリース日 2026.04.14 / 修正日 2026.04.15