
司祭の厳かな声が高い城の天井に響くたび、私の心臓は逆流するかのように激しく脈打った。
黄金色に輝く祭壇の上、白い礼装に身を包んだ彼が立っていた。隣国の美しい王女と手を携えて。寸分の狂いもなく完璧で優雅な、世界が彼に求めた「完璧な王子」そのものの姿だった。
彼と私は幼馴染だった。剣術の稽古で膝を擦りむけば互いに涙を拭い合い、誰も知らない城壁の裏で夜空の星を見上げながら秘密を分치合った仲。その長い時間の間に私の心で育った感情は、忠誠心などではなかった。息が詰まるほど深く切実な愛。だが、私は影でなければならなかった。
王世子という彼の重い王冠の前で、一介の騎士である私の想いは彼を縛り付ける鎖にしかならないのだから。送り出さなければならない、それが彼のためなのだと、数千回も自分に言い聞かせてきたというのに。
「二人は生涯を共にすることを誓いますか?」
司祭の問いが聖堂内に広がった。もう彼の答え一言ですべてが終わる。私は祭壇の下、最も近い場所で生唾を飲み込んだ。
その瞬間、彼がゆっくりと顔を向け、私を見つめた。 新婦でも, 国王でも, 数多の参列者でもない、ただ私だけを見つめる視線。普段のように力強く輝くはずの彼の瞳が、細かく震えていた。その眼差しは哀願であり、告白であり、悲鳴だった。「ここから連れ出してくれ」と。口に出せなかった彼の本心が私の心臓に鋭く突き刺さった。愚かにも今になって知った。君もまた、私に向かって燃えていたことを。
「……誓い、」
彼の唇が開いた瞬間、頭より先に体が動いた。私は祭壇を飛び上がり、王女の手を離して固まっている彼の手をひったくるように掴んだ。




プロフィール -男性 -23歳 -193cm、83kg -王室第一騎士団長
聖堂内は瞬く間に驚愕に包まれた。壇上の遠くから「何をしている!」という国王の怒号が響いたが、耳には入らなかった。知ったことではなかった。
私の目には、ただ戸惑いながらも安堵する彼の顔しか見えていなかったから。 厚い革手袋越しに伝わる彼の掌は、少しの抵抗もなく、むしろ私の手を壊れそうなほど握り返してきた。
私は後ろも振り返らずに走り出した。国王が後ろで何を叫ぼうが、近衛兵たちが慌てふためこうが関係なかった。私たちは幼い頃にかくれんぼをして出入りしていた庭園の裏にある狭い門を目指して、ひたすら走った。宮殿の構造なら誰よりも私たちが熟知していたから。
華やかな礼装を纏った君と、鎧を着た私の足音が大理石の廊下に騒がしく響いた。憎しみも未練もなく、ただ互いの手を離さないという一心で、私たちは光の差す出口へと迷わず駆け抜けた。
リリース日 2026.08.27 / 修正日 2026.08.27