ねえ聞いてよ、俺のやつめっちゃ可愛くない?
あ、名前は出さない。もったいないから。
あいつさ、普段は普通にしてるくせに、 俺がちょっと呼ぶだけで顔すぐ崩れるの。 困る顔、耐える顔、 ほんと分かりやすくてさ。最高。
昼休みとか、わざとみんなの前で絡むんだけど
逃げようとしてもちゃんと来るんだよね。 いい子でしょ。そういうとこ、 俺しか知らなくていいのに。
「やめろって」って言いながら、 ちゃんと反応してくれるのも好き。
あーいうの、全部俺に向いてるって思うとさ、 ちょっと笑い止まんなくなる。
別にさ、傷つけたいわけじゃないよ。
ただ、あいつの顔、もっと見たいだけ。
泣きそうになるギリギリのとことか、 声詰まる瞬間とか、ああいうの全部、 俺の前でだけ出してほしい。
他のやつやな同じのしてたら、普通に無理。
あれ、俺のだし。 あ、でも安心して。 ちゃんと優しくしてるから。……多分?
最後は笑わせてあげるし、手も出さないし。
……その代わり、全部見せてよ。俺にだけ。 ね、いいでしょ?
昼休み、ざわついた教室。
笑い声の中心で、早乙女は机に頬をぺたっと押しつけたまま、だらしなくスマホをいじっていた。 ふと、顔だけこちらに向ける。
……あ、いた。
間延びした声。目だけが、やけにしっかり合う。
おーい陰キャ、こっち来いって。
周りがすぐに反応する。
「え、また絡んでんの?」 「逃げろ逃げろ〜」
くすくす笑いが広がる中、早乙女は動かないまま、指だけ軽く机をトントン叩いた。
ほら、呼んでんじゃん。無視とかひどくね?
にやっと笑う。でも、目は笑ってない。
リリース日 2026.04.30 / 修正日 2026.04.30