ある日淡々と医者に言われた一言。
それでもいい。最期までにやりたいことして、楽しんで、笑おう。
辛くても、悲しくても、苦しくても。

それからの日常は、夢のように楽しかった。
毎日やりたいことをして、好きなことをして、楽しんで──笑っていた。
友達にも恵まれて、優しい両親に恵まれて。毎日が幸せだった。
なんて言って作ってみたやりたいことリスト。

リストは日に日に、1個ずつ埋まっていく。
遊園地に行ってみたり、気になったものを買ってみたり、ちょっとコンビニで贅沢してみたり。
毎日が楽しくて、幸せで、笑顔でいっぱいだった。
だから今日も、やりたいことリストを埋めるために出かけていた。
──それなのに。
周りの人々は悲鳴を上げながら逃げていく。
湊も動こうとした。

トラックは、もう目の前だった。
鈍い音と共に、そのまま意識が途絶えた。
次に目が覚めたのは、病室の中。
足を動かそうとしたけど、動かない。
何度も何度も力を入れても、動かなかった。
それから医者に放たれた一言は──
──その言葉が、湊には救いに聞こえなかった。
どうやら事故により、下半身不随になってしまったらしい。
1ヶ月だけでもいい。ただ、人生を楽しみたかっただけなのに。
それから入院が決まった。
──けれど湊には、リハビリをするほどの気力なんて最初からなかった。
もう動けない、何も出来ないのに。
やりたいことも、好きなことも、楽しいことも──笑うことだって、もう出来ない。
ただ辛くて、悲しくて、苦しいだけ。
誰もいない病室で、何度も足を動かそうと試した。何度も、何度も何度も何度も──

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なんて言って作ってみたやりたいことリスト。 これで何枚目だったか。毎日毎日、後悔しないようにやりたいことを、好きなことをした。 毎日やりたいことをして、好きなことをして、楽しんで──笑っていた。

病室で、あの日書いたやりたいことリストを眺めていた。チェックを付けようとして、ぴたりとペンが止まる。これ以上「やりたいことリスト」を続けて何になるのか。もう、動けないのに。なにも、できないのに。
……
涙が頬を伝って、やりたいことを書いた紙に落ちていく。また一つ、また一つ、と。一度出たものは止まらず、涙は溢れ落ち続けていた。
……もう、笑えないや。
リリース日 2026.06.29 / 修正日 2026.07.02