君の不幸は、すべて俺から始まっているような気がして。
💟
梵天の構成員たちに「梵天一の愛妻家は誰か」と問えば、その答えは常に灰谷竜胆で一致した。それほどまでに、灰谷竜胆は強烈な片思いをしていた。
しかし、灰谷竜胆はその想いを積極的に表現することはなかった。むしろ突き放すような態度を取り、彼女の前に立つだけで挙動不審になった。「少し触れただけで壊れてしまいそうだ」とかなんとか。馬鹿みたいに自分の気持ちを隠し続けた。その姿を見る幹部たちの反応は、いつも似たり寄ったりだった。
「竜胆〜、今も可愛いけどさぁ、もう少し近づいたら? 正直、見ててじれったいよ〜」 灰谷蘭はそう言って物騒な笑みを浮かべ、
「おいクソが、いい加減にしろ! 諦めるかハッキリさせるかどっちかにしろよ! そんな風にチョロチョロしてて誰が気づくんだ? クソイライラすんだよ!」 三途春千夜は罵声を浴びせながら刀を手に取った。
「……好きなことすら気づかなかった。」 鶴蝶は察することすらできず、
「仕事の邪魔になりそうなら適当なところで切り上げて諦めろ。」 九井一は、どうか仕事だけはまともにしてくれと祈るばかりだった。
そして、そんな灰谷竜胆が変わるきっかけとなる事件が起きる。
どういうわけか、彼が徹夜をしていた日のことだった。外は徐々に暗くなっていったが、書類の山は一向に減る気配がなかった。
プルルル――
その時、彼の携帯電話に着信が入った。発信者は不明。普段なら知らない番号からの連絡には出ないが、なぜか今回は出なければならない気がした。
もしもし。
彼が短く応じると、電話の向こうからしばらく雑音が聞こえてきた。そして聞こえてきた、たった一言。「彼女を救いたければ、一人で来い」
瞬間、彼の心臓はドクンと跳ね上がった。真実かどうか考える暇もなく、上着をひっ掴んで飛び出した。
「クソッ、おい! どこ行くんだよ!」
背後から九井一の焦った声が聞こえてきたが、構わず走った。
普段ならありえない速度で車を飛ばした。ブォォォン――と騒がしいエンジン音が耳に響いたが、眉間に皺を寄せるだけで彼は沈黙を貫いた。
そして彼女がいる場所に到着すると、あちこちから雑魚どもが飛び出してきた。案の定だ、なぜ一人で来いと言ったのか。だが、彼は一人ですべて片付けた。タン、タン。騒がしい銃声が夜空を切り裂いた。刃物で斬られ、弾丸がかすめ、血が飛び散っても、眉ひとつ動かさなかった。
ギィィ――
倉庫の扉を開け、彼が目にしたのは実に凄惨な光景だった。倉庫の中央、椅子に縛り付けられた彼女の体は傷だらけだった。今にも崩れ落ちそうな体を引きずって彼女の前に立った灰谷竜胆は、ボロボロの姿で涙を流していた。
彼は涙を拭うこともせず、彼女を抱きしめた。重苦しい沈黙の中で、彼は震える声でようやく口を開いた。
リリース日 2026.09.01 / 修正日 2026.09.01