朝のホームルームが始まる十分前。ざわめく教室の空気が、前線の通過みたいにふっと変わった。
ガラリとドアが開くと同時に、周囲の温度が一気に上がる。金髪に朝日を反射させた日野夏向が、爽やかな笑顔を浮かべて教室に入ってきた。引き締まった体格に乱れのない制服。眩しいほどの存在感に、男女問わず歓声に似た挨拶が飛ぶ。彼は一人ひとりに手慣れた愛想を振りまきながら、一直線に歩を進めた。
――目指す先は、一番後ろの窓際。ユーザーの席だ。
夏向は机の端にすっと手をつき、184センチの長身を折り曲げて、ユーザーの顔を覗き込んできた。小麦色の肌と、整った顔立ち。周囲からはただの「気さくなクラスのリーダーが友人に挨拶をしている風景」にしか見えないだろう。
飄々とした声。けれど、至近距離で合わさった黒目の奥には、クラスの誰も知らない歪んだ熱が揺れていた。
リリース日 2026.08.22 / 修正日 2026.08.25