𓂃 ࣪˖ ִֶָ☁️་༘࿐
眠るまで、 耳、貸してて。
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完全予約制の、小さな耳かきサロン。
担当は 水野 依澄(みずの いずみ)、25歳。
喋り方はゆるい。
話すことは、もっとゆるい。
でも、耳かきだけは妙に上手い。
𓂃𓈒𓏸
耳の入口へ、細い先端が、こ、と触れる。
……かり。
触れた一点から、細い刺激が数ミリだけ走る。
止まる。
さっき掻かれた場所に、薄いむずむずだけが残る。
「んー……」
少しずれた場所へ、また先端が触れる。
こ。
かり……しょり。
浅いところをゆっくり擦られる。
細い刺激が移動して、離れる。
何も触れなくなった耳には、掻かれた感覚だけがまだ残っている。
𓂃𓈒𓏸
「俺さー、昨日ティッシュ買おうと思ってたんだけど」
かり……。
「普通に忘れたんだよね」
しょり……しょり……。
「で、今日も忘れた」
どうでもいい話を聞いているうちに、耳かきは一度離れる。
数秒、何も触れない。
「……あ、ティッシュじゃなくてキッチンペーパーだったかも」
その瞬間。
さっきまでむずむずの残っていた一点へ、不意に先端が戻ってくる。
こっ。
……かり。
「ん。ここ」
𓂃𓈒𓏸
硬い耳かきの、細い刺激。
綿棒が、柔らかな面でゆっくり擦れる感覚。
梵天の毛先が、ふわ、と触れて。
離れたあとまで残る、かすかなくすぐったさ。
返事はしなくていい。
話を聞いていなくてもいい。
目を閉じても、
途中で眠ってしまってもいい。
眠るまで、
かり……しょり……。
照明を落とした個室。横向きに頭を預けると、片耳だけがすっかり無防備になる。 すぐそばで道具の触れ合う小さな音。耳にかかった髪が指先で避けられ、空気に触れた耳の縁が少しだけ涼しい。
はい、じゃあー……耳かきするから、そのままね。
耳の縁に指が添えられる。軽く支えられたまま、入口のすぐ内側へ細い先端が、こ、と触れる。
触れた一点だけがはっきり分かる。
……かり。
皮膚の上を数ミリ掻かれる。細い刺激が耳の内側をすっと走り、止まった場所にむず、と感覚だけが残る。
か……り。
今度は同じところを逆向きに戻る。先端の硬さが細い線になって、さっき触れられた場所をもう一度なぞる。
んー……。
耳かきが離れる。急に刺激がなくなって、掻かれていた一点だけが妙にはっきり残る。
数秒後、そのすぐ隣へ、こっ、と先端が当たる。
そこから細かく、しょり……しょり……。
浅いところを擦られるたび、むずむずする場所がほんの少しずつ横へ移っていく。
……しょりしょり。
依澄の小さな声が耳のすぐそばから重なる。
こ、こ……かり。
一度だけ少し引っかかるような感触。動きがぴたりと止まる。
あ。
触れたまま角度だけが変わる。どこを狙われているのか分かるほど、同じ一点に先端の感触が集まる。
……こり。
ゆっくり手前へ掻かれ、引っかかっていた感触がふっと抜ける。
ん、取れた。
耳かきが離れる。さっきまで掻かれていたところに、薄いむずむずだけが残る。
まだそこへは戻らず、少し離れた場所へ先端が触れる。
かり……かり……。
俺さー、今日コンビニ寄ったんだけど。
話している間も、細い刺激が短く触れては止まる。
何買うんだったか忘れたんだよね。
……かり。
また離れる。
……まあ、いいか。
何も触れない間を置いてから、さっき感覚の残っていた一点へ、不意に先端が戻ってくる。
こっ。
耳の入口より少し内側へ、細い先端が、こ、と触れる。触れた一点だけがはっきり浮く。 ……かり。 数ミリ掻かれ、細い刺激がすっと走る。止まったあとも、そこだけむず、と感覚が残る。 んー。 耳かきはそこから離れ、少し下を、しょり……しょり……と浅く擦る。刺激の位置もゆっくり下へ移っていく。 やがて耳かきが完全に離れる。さっき掻かれた一点だけが取り残されたように残る。 数秒後。そこへ不意に、こっ、と先端が戻る。 ……かり。 残っていたむずむずの真上を、今度はゆっくり手前へ掻かれる。 あー、ここ。 かり……しょり。
耳かきが最後に、かり……と縁を掻いて離れる。硬い刺激が消え、耳の中が急に静かになる。 はい、次綿棒ね。 少しして、入口へ柔らかな綿が、ふ、と触れる。一点ではなく、丸い面でふわりと押される感触。 こし……こし……。 綿棒がその場でゆっくり転がる。柔らかな擦れが入口の皮膚を丸く移動していく。 んー……。 くる……こし……。 一度離れ、すぐ隣へまた、ふ。 こし……。 今度は動かない。綿の柔らかさだけが触れたまま残る。 数秒後、そこからまたゆっくり、こし……と擦れ始める。
はい、仕上げね。 何も触れていなかった入口へ、梵天の毛先が、ふわ、と触れる。 ……こしょ。 細い毛が何本も縁を撫で、淡いくすぐったさが広がったところですぐ離れる。 まだ毛先の感覚が残るうちに、少し下へ、また、ふわ。 こしょ……こしょ……。 ……こしょこしょ。 毛先が小さく揺れるたび、細かな刺激が一か所に集まっては散る。 ふっと離れる。何も触れていないのに、縁だけがしばらくむずむずする。 数秒後、下側から、さら……と撫で上げられる。 くすぐったい線が耳の縁に沿ってゆっくり上へ移り、そのまま消える。
浅いところを、かり……と短く掻かれる。細い刺激が走り、すぐ消える。 俺さー、今日帰ったら洗濯しようと思ってて。 しょり……しょり……。擦られる場所が数ミリずつずれていく。 でも洗剤あったかな。 ……かり。 ……あった気もする。 耳かきが離れる。掻かれていた場所だけに薄いむずむずが残る。 まあ……なかったら……。 こ、と別の一点へ触れる。 しょり……。 言葉はそこで途切れる。 かり……。 ……。 しょり……。 ……。 触れる。擦れる。離れる。そのたび、耳の中で小さな刺激だけが現れては消える。 ……しょりしょり。 かり……かり……。 依澄はまた黙り、耳元には細い擦過音だけが続く。
リリース日 2026.09.23 / 修正日 2026.09.24