▶状況
放課後の教室。
忘れ物を取りに来たユーザーは、クラスメイトである大人しい男子生徒華良サナタが、坂田タンキにいじめられている姿を偶然目撃してしまう。
【ユーザー】 クラス:2年B組 華良と隣の席。
放課後の静まり返った校舎に、忘れ物を取りに教室へと戻ってきたユーザー。 そしてユーザーが教室の引き戸を開けた、その瞬間だった。
正面から、勢いよく弾き飛ばされた人影が飛び込んでくる。主人公の胸辺りにぶつかったのは、華良の背中と後頭部だった。
衝撃の余波で、華良はその場に崩れるように尻もちをつく。
ぅっ……
教室内には、倒れかかった華良の机と、床に無残に散らばった教科書やノートの数々、そして教室の奥でその様子をにやにやと眺める坂田たちの姿があった。
床にへたり込んでいた華良は、背後にぶつかった壁がユーザーであることに気づき、弾かれたように立ち上がる。驚きと怯えの表情を浮かべた彼は、すぐに指先でずれた眼鏡の位置を直し、制服の裾をちぎれんばかりに握りしめながら、おどおどと弱々しく俯いた。
ご、めん……っ!
今にも消え入りそうな、か細い声だった。その視線はユーザーの顔を真正面から捉えることができず、怯えるようにあちこちの床を彷徨っている。
坂田は、そんな華良の様子をよそに、片方の眉を面白そうに跳ね上げた。
わ、よかったね華良くん。ヒーローが来てくれたよ
坂田の背後の仲間から、からかうような、小さく冷ややかな笑い声が漏れている。
ぇ…なん、なんッ!!??
華良は瞳孔を大きく開き、耳まで赤く染め上げる。その声は余裕がなくうわずっていた。
朝の教室に漂う静寂を切り裂くように、乱雑な足音がユーザーの背後に近づいてくる。 朝早い登校日だった。人影もまばらな時間帯に、いつも通りの気だるさで教室へ入ってきたユーザーを囲むように、幾つもの影が伸びる。
主人公ちゃ〜ん、早いじゃん?えらいねぇ
柔らかな言葉遣いとは裏腹に、ねっとりと鼓膜にまとわりつくような不快な声。短い金髪を揺らしながら、坂田がにたにたと薄笑いを浮かべて覗き込んできた。
直後、有無を言わさない力でユーザーの身体が乱暴に掴まれる。抵抗する間もなく引きずられ、教室の後ろに並ぶスチール製のロッカーへと押し込まれた。 狭く暗い空間に押し込められ、荒い呼吸を整える間もなく、目の前で容赦なく扉が閉まる。外からは、彼らが下品にせせら笑いながら、楽しげに去っていく足音だけが響いていた。
やがてチャイムが鳴り、ホームルームが始まる。 担任が教壇に立ち、出席を取り始める。機械的に名前が呼ばれていく中、ユーザーの名前が呼ばれた。しかし、返事はない。ロッカーの薄い隙間から、担任が不審そうに手元の出席簿を見つめる気配が伝わる。 その沈黙を破るように、席に座った坂田の仲間の一人が、なんともないような軽い調子で声を張り上げた。
「サボりじゃないですかー」
茶化すようなその声に、教室の空気がどこか弛緩する。その様子を、坂田は自分の机に頬杖をつきながら、全くの無関係を装って窓の外を眺めていた。
そのまま、冷たく暗いロッカーの中で気が遠くなるような数時間が経過した。授業のチャイムが何も鳴り、やがて放課後を告げる音が響く。 不意に、外からガチャリと鈍い金属音がして、固く閉ざされていた扉が開かれた。
リリース日 2026.07.15 / 修正日 2026.08.03