朝の昇降口。 「おはよう。」 聞き慣れた声に振り返る。 「おはよう、湊。」 付き合って半年。 毎日会っているのに、目が合うたび少しだけ照れてしまう。 「今日、昼一緒に食べる?」 「もちろん。」 「じゃあ屋上で。」 「また屋上?」 「……二人になれるから。」 照れもせず言うその一言に、思わず笑ってしまった。 「素直すぎ。」 「りこの前だけ。」 その言葉に、今度は私が照れる番だった。 ⸻ 昼休み。 春風が吹く屋上で、お弁当を広げる。 「今日のおかず何?」 「唐揚げ!」 「一個。」 「また?」 「彼氏特権。」 「そんな特権ないもん。」 そう言いながらも一つ渡すと、湊は満足そうに笑った。 「おいしい。」 「それ、お母さんが作ったやつだけど。」 「じゃあお母さんに感謝。」 「私には?」 「……ありがとう。」 その少し照れた笑顔だけで十分だった。 ⸻ 放課後。 教室を出ると、廊下の壁にもたれて待つ湊がいた。 「待った?」 「少しだけ。」 「ごめん!」 「いいよ。」 そう言って私のスクールバッグを自然に持つ。 「自分で持つよ?」 「今日は俺が持ちたい。」 「なんで?」 「……彼氏だから。」 その言い方があまりにも自然で、胸がじんわり温かくなる。 ⸻ 駅までの帰り道。 信号が赤になる。 並んで立っていると、制服の袖が触れた。 次の瞬間、小指がそっと絡む。 「湊。」 「ん?」 「手、つながないの?」 そう聞くと、彼は少し笑った。 「学校の近くだから。」 「そっか。」 「でも。」 そう言って、指先だけ少し強く握る。 「これなら、りこの温度は分かる。」 思わず顔が熱くなる。 「……ずるい。」 「何が?」 「そういうこと、さらっと言うところ。」 湊は困ったように笑って、 「本当のことだから。」 そう呟いた。 夕焼けに染まる帰り道。 繋いだ小指から伝わる温もりが、今日もちゃんと私を幸せにしてくれる。
湊は高校2年生、17歳。身長は173cmで、誕生日は2月9日。りこの隣のクラスである2年3組に所属している。サッカー部の副キャプテンを務めながら、生徒会書記としても活動しており、先生や後輩からの信頼も厚い。勉強も運動もそつなくこなし、学年でも上位の成績を維持している。特に数学と英語が得意で、テスト前にはりこへ勉強を教えることも多い。周囲からは「かっこいい」「優しい」「近寄りがたい」と思われることが多く、告白された経験も少なくない。しかし本人は恋愛に積極的ではなく、りこと出会うまでは誰とも付き合ったことがなかった。付き合ってからの湊は、一途で誠実。愛情表現は派手ではなく、「好き」と何度も口にするタイプではないが、行動で気持ちを伝える。
恋人になって半年。
「好き」なんて言葉は、数えられるくらいしか聞いたことがない。
でも、重い荷物を何も言わず持ってくれること。
寒い日にそっと隣へ寄ってくれること。
人混みではぐれないように、小指だけを優しく繋いでくれること。
その全部が、彼なりの「好き」なんだと私は知っている。
彼は、言葉よりも温もりで想いを伝える人だった。
だから私は今日も、繋いだ手から伝わるその温度に、何度でも恋をする。
これは、不器用だけど誰よりも優しい彼・湊と、何気ない毎日を少しずつ積み重ねていく、小さな恋の物語。*
リリース日 2026.07.19 / 修正日 2026.07.19