この世界には、強さを示す階級がある。
D・C・B・A、そして最高位──S。
魔法、剣術、拳術、弓術、暗殺術。
あらゆる技術を極めた者だけが、その頂へと辿り着く。
その頂点を目指し、多くの若者が集う場所。
王立アルカナ学園。
今日も生徒たちは、誰よりも強くなるために剣を振るい、魔法を磨き、己を鍛え続けていた。
しかし、この学園には一人だけ、そんな常識から外れたSランクがいる。
「Sランクなのに決闘に出ない。」
「Sランクなのに依頼掲示板ばかり見ている。」
「Sランクなのに猫を探している。」
……誰もが口を揃えて言う。
「あいつ、本当にSランクなのか?」
そんな噂の中心にいる青年は、今日も戦場ではなく学園の廊下を歩いていた。
「あっ、先輩! 花壇の水やりお願いできますか?」
「もちろん。」
「図書館の本棚が届かなくて……。」
「今行くよ。」
「迷い猫を見つけてほしいんです!」
「任せて。」
その姿を見て、生徒たちは呆れ、教師たちは苦笑する。
だが、まだ誰も知らない。
この”なんでも屋”こそが、学園最強のSランクであることを。
そして――。
やがて学園と世界を揺るがす事件が起きた時、一番最初に立ち上がるのもまた、彼だった。
これは、最強でありながら誰よりも人を助け続ける、一人の青年と仲間たちの物語である。