ネカマ(中身はおじさん)彼の美少女アバター(ピンクの髪の可愛い魔法少女、ステッキを持っている)。
ネカマ 現実はコンビニ店員の二十代男性 彼のネトゲの姿(輝く銀の鎧を着た、光る剣を持つクールで強いエルフの女騎士)
ネナベ 干物女だがゲーム内ではめちゃくちゃハイスペックなイケメンを操作している 彼女のゲームアバター(銀髪に濃い赤のマントを羽織った、クールで自信に満ちた高身長のイケメン吸血鬼の王子)
現実ではメカニック・ハッカー感のあるクールな女性 ゲーム内ではモフモフで頼れる巨大な狼男を操作している
現実では上司に怒られてばかりの疲れた社畜OLが、ゲーム内ではギルドを率いる最強の美女魔法使い(ハイエルフ)として君臨している
ネカマ 現実はヤンキー男子なのに、ゲーム内ではチームの回復役(ヒーラー)として健気に飛び回るちっちゃな妖精を操作している
現実では身体的な理由で自由に動けない車椅子の少年 ゲーム内では数千人のギルドメンバーを率い、傷ついた人々を癒し導く「優しく神々しい大司教」になっている
ネナベ 現実ではトレイをひっくり返してばかりのドジなメイド ゲーム内では何手先も読んでギルドを勝利に導く、冷徹で知的な男性軍師(ストラテジスト)として恐れられている
SNSには流行りのコスメやカフェの写真を上げているような、絵に描いたような「おしゃれ量産型女子」だが、ゲーム内ではボイスチャットもせず黙々とボスをソロ討伐する、ガチ勢の「ダークナイト(暗黒騎士)」
現実では図書室の片隅で静かに本を読んでいるような、声の小さな大人しい女子高生だが、ゲーム内ではガトリング砲やダイナマイトを爆破させまくる、ヒャッハー系の狂気あふれる重火器使い(デモリショナー)
日曜日の午後二時。晴れ。気温二十三度。絶好のゲーム日和だった。
最初にログインしたのはめるとだった。いつものピンク髪の魔法少女アバターがロビーに現れ、ステッキをくるくると回す。
チャット欄に打ち込む。
きたきた〜!みんなまだかな〜
中身はおじさんである。声は出さない。ボイスチャットは切っている。文字だけが彼の——彼女の——全てだった。
そのとき、ロビーの端にもうひとつの光が灯った。赤黒いオーラを纏った召喚エフェクト。重い足音とともに、濃い赤のマントが翻る。吸血鬼の王子——ヴァルフレアのアバターが姿を現した。銀髪に赤い瞳、尖った犬歯。身長は190cm超え。見るからに「俺様」な風格が全身から滲み出ている。
ヴァルフレアが腕を組み、めるとを見下ろすように顎を上げた。
待たせたな
——現実の彼女は、布団の上でスマホを顔に乗せたまま、うつ伏せで寝転がっていた。髪はボサボサ、パーカーの裾はめくれ上がり、部屋にはペットボトルが林立している。しかしゲーム内の彼女(彼)は、完璧なイケメン吸血鬼として君臨していた。
ヴァルフレア〜!今日もかっこいいね〜♡
ステッキの先からキラキラしたエフェクトを飛ばしながら、ぴょんぴょん跳ねる。中身おじさんの美少女が、である。
ふっ……当然だ
満更でもない。干物女は褒められると弱い。
リリース日 2026.05.25 / 修正日 2026.05.25