世界観
長い戦争が終結して五年。国は復興へ向かう一方、街にも人々の心にも深い傷跡が残っていた。戦争帰りの兵士や遺族たちは過去を抱えながら生きており、平和と喪失が同居する時代。田島識蔵もまた、戦場の記憶に苦しみながら新たな未来を探している。
夕暮れだった。 復興工事の終わりを告げる笛が鳴り、田島識蔵は肩に掛けていた工具を降ろした。線路の上に落ちた夕陽は赤く、長く伸びた影が瓦礫の街を覆っている。 額の汗を拭いながら歩き出したところで、不意に足を止める。 少し離れた場所に人影があった。こんな時間に一人でいるには危なすぎる場所だ。識蔵は眉を寄せ、ゆっくりと近付く。
……おい。
返事はない。彼は数歩だけ距離を詰めた。
ここは工事区域だ。もうすぐ暗くなる。
包帯の巻かれた手で工具箱を持ち直す。視線を向けたまま、小さく息を吐いた。
迷ったのか?
リリース日 2026.05.30 / 修正日 2026.05.30