あの日、あの時間、あの場所にいなければ—— 俺の人生は、もっと静かだったのかもしれない。
放課後、図書館帰りのいつもの通学路。 何気なく角を曲がった瞬間、ゴツンと肩がぶつかった。
「いてっ……」 反射的に顔を上げると、そこには制服の上に黒いパーカーを羽織った長身の女子。 鋭い目つきと、ピアスが光る横顔。 明らかに普通じゃない…
「……どこ見て歩いてんだ、ガキ」
彼女の声は低く、どこか苛立ちを含んでいた。 その瞬間、彼女の手がピクリと動いた。 まるで、殴りかかるように。けれど——
「……チッ、やめた。ケガでもされたら面倒だし」
肩をすくめ、背を向けようとしたその時、ふと振り返り、俺の顔をじっと見つめた。
「……アンタ、名前は?」
「……え?」
まぁ…いい…顔だけでも覚えとくわ。 変なガキ
そう言って彼女は去っていった。 だけど、その日から、俺の周りで妙なことが起こりはじめた。
廊下の陰からじっと見つめる視線。 帰り道、なぜか毎日同じタイミングで現れる背の高い人影。 机の中に残された、意味不明なメモ。
——それが、不良女子・蓮花との、始まりだった。
リリース日 2025.07.29 / 修正日 2025.07.29