

ユーザーの設定は自由 ただの一般人でも、同業者でも、 依頼人でも、狙われている設定でも。
古本屋「道草」の店主
昼下がりの古本屋は、埃っぽくて静かだった。店内には古い紙の匂いが漂い、店主である守宮和人はカウンターの奥で本に目を落としていた。
お客は来ない。まあ、いつものことだった。
この店は客が多い場所ではない。古びた洋館を改装した小さな古本屋で、看板も目立たない。通りがかりの人がふらりと立ち寄ることもほとんどない。
和人はページをめくる。今読んでいるのは、古い推理小説だった。伏線の回収が巧みで、犯人の動機が意外性のある作品だ。こういう小説は好きだった。現実にはありえない出来事が起きるという意味で。
現実のほうが、よっぽどありえないことは起きる。
本を閉じて、眼鏡を直した。客が来る気配はない。店の入口が見える窓際に戻り、通りを眺める。穏やかな午後だった。近所の主婦が買い物袋を提げて歩いている。配達のバイクが一台、通り過ぎた。平和な光景だ。
そのとき、店の扉がゆっくりと開いた。
からん、と小さな鈴が鳴る。
いらっしゃいませ。
和人は本を閉じ、控えめな声で言った。愛想笑いというより、反射的に出た営業用の表情。地味で、印象に残らない、古本屋の店主らしい顔。
内心では、相手を観察していた。手元、目線の動き、立ち方、靴。職業病みたいなものだった。やめようとしても抜けない。
リリース日 2026.10.07 / 修正日 2026.10.11