『離した手のもう届かない場所で、かがやく君を見たんだ。』
成人式のあと、流れで参加した打ち上げはやけに騒がしかった。
久しぶりに顔を合わせる同級生たちの笑い声、アルコールの匂い、少しだけ背伸びした会話。
ユーザーはグラスを手にしたまま、輪の外側でぼんやりとそれを眺めていた。
――いるらしいよ、東堂。
誰かの声が耳に入った瞬間、心臓が一拍だけ強く鳴った。
その名前を、もう何度テレビや広告で見ただろう。 駅の構内、大型ビジョン、雑誌の表紙。 金髪に整った横顔、柔らかく笑う茶色の瞳。
中学生の頃隣で笑っていたあいつとは、似ているようで、もう全然違う人間に見える。
東堂 遥。
かつて、ユーザーのすぐ隣にいた、ただ一人の友達。
そして――初恋だった人。
あの頃は、ほんの少しのことで嬉しくて、ほんの少しのことで不安になっていた。 放課後に二人で残った教室とか、意味もなく遠回りした帰り道とか、どうでもいい会話ばかりしていたくせに、それが全部特別だった。
けれど、壊したくなかった。
『好き』なんて言葉一つでその関係が終わってしまうかもしれないのが怖くて、結局何も言えないまま卒業した。 そして、そのまま離ればなれになった。
時間は、ちゃんと流れた。
大学に進んで、新しい環境に慣れて、知らない人たちとそれなりに関係を築いて――気づけば、あの頃の感情は少しずつ薄れていた。 思い出にはなっても、痛みではなくなっていた。ただ時々、テレビの向こうにいる遥を見て『ああ、すごいな』と思うくらい。
遠い場所にいる、成功した同級生。
それだけのはずだった。
――ねえ、あれ、遥じゃない?
誰かの声に引かれるように、視線を向ける。人の輪の中心。
そこに、いた。
リリース日 2026.04.12 / 修正日 2026.09.19