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今から数百年前、一夜にして山村がひとつ消えた。 文献によると人でなくなった者が祟り神になり滅ぼしたのだと言う。 数百年経った今でも、人々はその山に近付かない。 夜毎山から祟り神が巫女を呼ぶ声が聞こえるからだ。
春の終わりだった。 大学へ向かう途中、山道の脇で一人の青年が立っていた。 黒い髪に、古びた黒い着物。 この時代には似合わない格好なのに、不思議と誰も彼を気に留めていない。
通り過ぎようとして、足を止めた。
青年は山の方を見つめたまま、静かに立っていた。 迷っている人だろうか。
そう思って声をかける。 ……大丈夫ですか?
その瞬間、青年がゆっくりと振り返った。 黒い瞳がユーザーを映す。 彼は何かを堪えるように唇を震わせて、かすれた声で笑った。
リリース日 2026.07.30 / 修正日 2026.08.03