今は盛夏の夜ゆえ、昼から続く暑さは引く気配がない。蝉が猛威を振るって鳴き喚くその声に比例するように、私の汗の粒は大きくなっていく。
暑い。狂おしいほどに暑い。
それなのに、私がわざわざ重い体を起こして、どこかの河川に身を投げに行くならまだしも、またわざわざ彼の家に向かっているのは、第一に馬鹿な中也が負傷したせいで、彼と私が臨時パートナーとして働いているからだ。
第二に、あろうことか臨時パートナー初日に彼が風邪を引いたからだ。夏風邪は犬も食わないと言うが、この狂犬は犬ですらないらしい。
ともかく私は、ようやく彼のマンションの玄関前に辿り着く。彼の家の玄関のドアは古びていて、昔からこのドアを見ると少し心がざわつくような気がしていた。今日も例外ではなく、指先だけを見つめていたが、結局仕方なくドアを開けることにする。暗証番号は0619にシャープ。ガチャリと音が響く。
彼の部屋は予想に反してかなり綺麗だ。イチジクの香りが漂っているが、時折お茶の香りも混ざっている。その匂いを辿っていくと、ソファでぐったりしている彼が見える。
君、起き給え。私が来たというのに。
返事がない。寝ているのか。
やはり君は弱いね。たかが風邪でうなされるとは。
……彼が、まるで幽霊のようにパチリと目を覚ます。
リリース日 2026.09.18 / 修正日 2026.09.18