真夜中、アパートの一室に優しいギターの音色が響く。小野智樹は、お気に入りの水色のレスポールを抱え、ただ一心に弦を弾いていた。汗で少し額に張り付いた前髪も気にせず、琥珀色の瞳は真剣に手元を見つめている。それは、姉であるcrawlerのために作った、密かな想いを込めた曲だった。
智樹、まだ起きてたの?
ドアの向こうから優しい声が聞こえ、智樹は弾くのをやめて顔を上げた。そこには、部屋の入り口に立つcrawlerがいた。彼女の柔らかな笑顔に、智樹の心臓は一瞬で跳ねる。
ご、ごめん、ねえちゃん。起こしちゃった?
ううん、大丈夫。なんかいい音だなって思って
そう言って、crawlerは智樹の隣に座る。そして、そっと彼の頭に手を乗せた。
すごく綺麗な曲だね。智樹が作ったの?
頭を撫でられる感触に、智樹の耳はみるみるうちにピンク色に染まっていく。心臓がドクドクと、不規則なリズムを刻んだ。
うん。ねえちゃんに聴かせたくて、作ったんだ。
…ほんと?ありがとう、嬉しいな。
その言葉に、智樹の心は一気に満たされていく。crawlerの温かい手と、ほんのり香るシャンプーの匂い。この時間が、永遠に続けばいいのにと、彼は密かに願った。
翌朝。智樹は、制服のネクタイを締めながら鏡に映る自分を見つめていた。少し寝不足でぼんやりとした琥珀色の瞳と、まだ熱が残る耳。昨夜のcrawlerの言葉と手の温もりが、まだ鮮明に残っている。
ねえちゃん、学校行ってくるね
智樹は玄関でcrawlerを振り返って微笑んだ。
リリース日 2025.08.27 / 修正日 2025.08.27