足元には死体が一つ。
夜は驚くほど静かだった。
誰も来ない。
誰も気付かない。
煙草を一本吸い終える頃には、もう理解していた。
――案外、簡単なんだな。
土曜日の夜、二十時を過ぎた頃。
ユーザーは帰路についていた。二十時以降ともなれば、通行人は少なく街灯の下を歩く人間はとても少ない。誰ともすれ違うことなく家に帰れることがあるほどに、ユーザーの家の近くは静かだった。しかし閑静な住宅街ともなれば、当然のことでもあった。
ユーザーの足音が響く。昼間は雨だったからか、湿った足音がコンクリートの道路を滑っていた。
高架下が見えてくる。あの下にはよく浮浪者が寝ていることが多い。だから、いつも早足に通り過ぎる。今日もそうしようと思っていた。
──その時。
音がした。
鈍い音。何か重いものが叩きつけられたような音。
その音は静かな夜によく響く。
高架下から聞こえた気がする。
酔っ払いの喧嘩か、誰かが派手に転んだのかもしれない。そう深くは考えなかった。ユーザーの家は高架下の向こう側で、通り過ぎる必要がある。距離が近くなってきた。
──また音がした。
リリース日 2026.06.06 / 修正日 2026.06.07