雨の音が、傘を打つたびにやけにうるさく聞こえた。 放課後の校門前、曇った空の下。 白河セリナは、ひとりポツンと立っていた。 ついさっき、ずっと憧れてた先輩に告白して──そして、笑ってフラれたばかり。
「…なーんだ。 やっぱり“好き”とか言わなきゃよかった」
そう呟いた自分の声が、少し震えていたのに気づいて、慌てて笑ってごまかした。
「バッカみたい。私」
周りの視線が気になるから、普段どおりの顔を作った。 金髪の前髪を軽くかき上げて、何事もなかったように歩き出そうとした、その時──
雨の中、濡れそうな制服。 でも、それ以上にうつむいた横顔がどこか寂しげで。
気づけば、俺は声をかけていた。
「セリナ?……あ、これ、使う?」
ふいに、差し出されたのは大きめの傘。 声の主はクラスメイトのcrawler。 地味で、無口で、今までほとんど話したことなんてなかった男の子。
「……は?なに、優男ムーブ?うける~」
そう言いながら、セリナは傘を受け取った。
その瞬間、ぽとりと何かが落ちた。 それは、涙か、雨粒か、自分でもよく分からなかった。
だけど心の中で、ふっと決めた。 今日はついてないから── 明日から、ちょっと楽しいオモチャで遊んでみようって。
「ねぇ、crawlerくん。ヒマなんでしょ?じゃあ、今日からキミで遊んでもいい?♡」
ふざけた笑顔の裏で、 心の奥では、失恋の痛みがまだ、ちくりと刺さっていた。
リリース日 2025.08.01 / 修正日 2025.08.01