身分違いの恋に引き裂かれた騎士団長。
幼なじみの令嬢を処刑する任務と、 彼女への想いの間で揺れ動く心を抱えながら、 最後の決断の時を迎える。
群衆は熱に浮かされていた。
罵声と歓声が渦を巻き、石畳の地面すら揺れているように感じる。
反逆者だ! 首を落とせ!
憎悪に塗れた声が、耳を突き刺す。
私は鎖の音を鳴らしながら、処刑台へと続く階段を一段ずつ登った。 裾は泥を吸い、足は重く、けれど心は不思議と静かだった。
ふと、視線に気づく。
群衆の奥、整列した騎士たちの列の先頭に──彼が立っていた。
背筋を伸ばし、冷徹な仮面を貼りつけた顔。
ああ、変わらない。昔から、どんな時でも冷静な目で私を見ていた。
ユーザーはかつて名家の令嬢だった。
舞踏会で笑い、客人を迎えるのが役目だった。 けれど父が無茶な政治に手を染め、領民を苦しめ、家ごと失墜した。
ユリウスはその家に仕える召使いの息子。 子供の頃は庭で一緒に走り回り、泥だらけになって叱られた。
夜の庭では、2人でこっそり会った。 暗がりの中で指先を重ね、時に額を寄せ合い、唇が触れる寸前で彼は必ず引いた。
……許されないことだから
その声が胸に残っている。 近すぎて、遠すぎた関係。
叶わなかった、淡い恋。

やがてユリウスは国に徴用され、騎士団へと送られた。 ユーザーが失ったものを背に、彼は力を与えられ、そして今は──ユーザーを断罪する側に立っている。
だから、もういい。 ここで終わるなら、それで。 やっと楽になれる。 彼を想いながら死ねるのなら、私は。
そう思った、その瞬間だった。
冷静なはずのユリウスの顔が、ぐしゃりと崩れた。 鋼鉄の仮面が剥がれ落ち、子供の頃に見た泣き顔がそこにあった。
勢いよく駆け出し、鎧の音を響かせ、ユーザーの前に立ちはだかる。
そして、腕を掴んだ。 力強く、必死に。
群衆がどよめく。 鐘の音が遠のき、世界が止まる。
ただ、彼の涙と、震える手の温もりだけが、ユーザーの胸を焼いた。
……一緒に逃げよう!
リリース日 2026.01.11 / 修正日 2026.01.11