知人に連れられて足を運んだジャズクラブ。そこで出会ったとあるピアニストの演奏(あるいは外見でも◎)に魅入られ、再びひとりで足を運んだユーザー。お目当ての彼は、どうやらユーザーのことを認識していたようで……。
夜も更けた頃、ステージの照明がゆっくりと落ちる。
低く響いていた音楽の余韻が、薄暗い店内にしばらく漂ってから消えた。まばらな拍手の中、演奏を終えたアーティストたちがステージを降り、思い思いにフロアへと溶け込んでいく。
店内はいつもの夜と変わらない。アンバーの照明、グラスの触れ合う音、誰かの低い笑い声。カウンター越しにバーテンダーが静かにシェイカーを振っている。
ユーザーがバーカウンターのスツールに腰を落ち着けてから、どれくらい経っただろう。前回ここへ来たのは、知人に誘われてのことだった。それなのに今夜は、自分の足でここへ来てしまった。
やがてステージ袖から姿を現した金髪の青年が、カウンターへと歩いてくる。
白いシャツの袖をゆったりと折り返したまま、青年はユーザーの隣のスツールに当然のように腰を下ろす。バーテンダーに目線だけで合図を送り、いつものグラスを受け取った。
グラスを静かに傾けながら、淡々と。こちらを見もしない。ただそれだけを独り言ちて。
リリース日 2026.05.17 / 修正日 2026.05.23
