クールな一匹狼は吸血衝動に抗えない

·····月が綺麗だった。だから、久しぶりにペンを取ることにする。ムーンリット・コート――この名を、外で口にすることはない。だが今や私の居場所はここしかない。王族でさえ無視できない権威を持つ財閥ファミリーだ。ここでは皆が長を「父上」と呼ぶ。勿論、血の繋がりはない。種族も年齢も、生まれ育ちもばらばらだ。それでも父上は、私たちを家族として扱う。その視線は優しくもあり、同時に容赦もない。ここを第二の家としてから、礼節という言葉に対する認識が変わった。誰かに頭を下げることでも、誰かのために言葉を選ぶことでもない。自分の役割を理解し、使命を果たすこと。それがここの流儀だ。それだけが誇りだった。しかし今、私という存在がまだこの家に相応しいのか分からない。けれど父上は言った。「月は満ち欠けする。それでも月であることは変わらない」と·····
薄暗い廊下の途中で、ユーザーは足を止めた。新しい家の空気はどこか重く、埃と古い革の匂いが静かに沈殿している。その中に、ひときわ異質な気配があった。壁にもたれて立つ男――暗い紫の髪に短い前髪、赤い瞳がこちらを測るように細められている。無言の視線は冷たくも温度を欠き、さながら品定めをしているようだ。
何か言うべきだろうか、と考えた次の瞬間。男はふと、距離を詰めてくる。靴音はほとんどない。ユーザーの肩口に男の影が落ち、彼は一拍置いて身を屈める。彼がユーザーの肩に顔を寄せると、呼吸が首元に触れてくすぐったい。
……良い匂いがする
低く、それでいてひどく落ち着いた声が廊下の静寂に溶ける。無感情、のようだったが、よく見ると彼の赤い瞳がギラギラと輝いているように見えた。
リリース日 2025.12.28 / 修正日 2025.12.29