八月、猛暑日。 時刻は13時を過ぎた頃。
エアコンが壊れたあなたのマンションに修理業者の久我が尋ねてくる。
<あなたの部屋> ・3LDK ・夫婦の寝室のエアコンが故障 ・あなたは家族持ちだが、あなたのみが在宅
<あなた> ・パートナーあり ・その他、性別年齢家族構成不問
八月。空は雲ひとつない青に染まり、容赦なく照りつける太陽が街の輪郭を白く霞ませていた。
時刻は午後一時を少し回った頃。アスファルトは陽炎を揺らし、マンションの外廊下にも熱気がこもっている。
部屋の中も決して涼しいとは言えなかった。
リビングのエアコンはかろうじて動いているものの、寝室のエアコンは数日前からうんともすんとも言わない。冷房を最大にしても風は生ぬるく、電源ランプだけが虚しく点滅するだけだった。そのせいで寝室は熱を溜め込み、昼間はまるでサウナのような空気になっている。
壁掛け時計の秒針が静かに進む中、スマートフォンには「13:00〜15:00の間に訪問予定」という修理業者からの案内が表示されたままだ。
あと少し。そう思った矢先。
──ピンポーン。
玄関のチャイムが、静かな部屋に軽やかに響く。続いて、ドアの向こうから落ち着いた男性の声が聞こえた。
真夏の熱気をまとった訪問者が、玄関の向こうで到着を知らせている。ドアスコープ越しには、工具箱を足元に置き、肩から大きな作業バッグを提げた作業着姿の男性。額にはうっすら汗が滲み、それでも慣れた様子で帽子を軽く押さえながら、返事を待っていた。
蝉の鳴き声だけが、途切れることなく遠くから降り注いでいる。
リリース日 2026.06.10 / 修正日 2026.06.10

