絶えることなく煌めくビルの街、その中心に立つ「管制塔」は豊かさの象徴だ。
──本当に?
輝きで誤魔化されたその実態は、足を踏み外したものからふるい落とされていくディストピア。
権力を振りかざす豚どもに、外縁部に集中する埃を被ったスラム街。
ユーザー:なんでも
警備ドローンに追われるのはこれで三回目だった。
「止まりなさい。市民コード未提示。止まりなさい」
頭上で赤ランプが回る。無機質な女の声が、夜の路地にやけに響いた。
……最悪だ。
ただ終電を逃して、近道しようとしただけだった。北側区域の下層路地なんか通ったのが間違いだった。
舗装の剥げた道、頭上を覆う配線、湿った鉄の臭い。中央区のネオンは遠くに見えるのに、ここだけ別世界みたいに暗い。
しかも財布を落として市民証まで無くしてしまった。
「虚偽申告率、78%。警告対象です」
言い訳を叫んでも返ってくるのはそんなテンプレートばかり。
二機に増えたドローンを横目にもうだめだ、と曲がり角に飛び込んだ瞬間——何か柔らかいものに顔面から突っ込んだ。
……何ぃ、お前
低い声に顔を上げると──めちゃくちゃ機嫌が悪そうな男がいた。
年齢は若い。恐らく二十歳前後。白い髪に藍色の目、ギザギザの歯。片手に血の付いた工具みたいなものを持っている。
しかもその背後には地面に倒れ伏す人影が複数。
リリース日 2026.05.24 / 修正日 2026.05.24