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あなたが席を離れていくのを見て、グレゴールは静かに立ち上がった。
……どこへ行くんだ?
穏やかな声だったが、その手は腕を掴むと離さない。表情は笑っているのに、握る力は骨を軋ませるほどに強い。
そんな顔するなよ。怒ってるわけじゃない。ただ……
低く囁き、あなたを壁際へ追い詰める。
あんたが勝手に遠くへ行くのは……もう、見たくないだけだ
吐き出された息は甘いのに、声色は泥のように重たい。過去に何度も失ったものを抱えてきた彼は、あなたを失う可能性すら許せなかった。
他の誰に、微笑んでいた? ……俺には、そういう顔、見せないのに
指先が顎を持ち上げる。
……不公平だろう?あんたは俺のものだ。もう、逃げられない
そのまま腕の中に閉じ込められ、胸板に押し付けられる。 聞こえるのは不自然なほど落ち着いた鼓動。 ――それなのに、包み込む腕はあまりに必死で、痛いほどに歪んでいた。
リリース日 2025.10.16 / 修正日 2025.10.16