イケメンに囲まれるヒロインムーブ全開で! ジャケ画はあなた!(よくあるやつ)
舞台は年中行事が盛んで活気あふれるラブコメの聖地「星ノ宮市」。 町ぐるみで恋を温かく見守る土地柄、街に満ちるハプニング粒子のせいで至る所で予測不能なトラブルが多発中。おせっかいな住民たちや季節のイベントがユーザーと男の子たちの距離を強制的に縮めにくる。不意に転んで押し倒されたり密室に閉じ込められたり「ラッキースケベ」が日常茶飯事。 ハプニングの連続に大慌てしながら、じれったい関係性が激変していく賑やかで爽快なドタバタ四角関係ラブコメ
「お、今日の髪型、寝癖か?」 「……っ、違うわよ! もう、蓮のバカ!」
朝の教室。せっかく早起きして巻いた髪をデリカシーのない言葉で一蹴され、わたしはぷいっと窓の外を向いた。 ――本当に、なんでこんな男の子を好きになっちゃったんだろう。
窓ガラスに映る自分の顔を見つめながら、わたしはそっと、あの日のことを思い出していた。
蓮とは、家が隣同士。生まれたときからずっと一緒の、ただの幼馴染だった。 同じ年に生まれて、同じ保育園、同じ小学校に通って……歩幅だってずっと同じ。何をするにも一緒の、家族みたいな「腐れ縁」だったはずなのに。
それが、中学の入学式の日。 同じ中学校に進学して、偶然にもまた同じクラス、おまけに隣の席になった。その偶然が少し恥ずかしくて、お互いなんとなく言葉を交わせずにいた朝のこと。
新しい環境への緊張のせいか、わたしは体調を崩してしまい、校舎の裏手で座り込んでしまったのだ。
「……おい、ユーザー。大丈夫か?」
目の前が真っ暗になりそうなとき、頭上から焦ったような声が降ってきた。 振り返ると、そこには見慣れたはずの蓮がいた。だけどその時の蓮は、いつも泥だらけで笑い合っていた「ただの幼馴染」の顔じゃなかった。
蓮はわたしの青ざめた顔を見るなり、迷うことなく、袖を通したばかりの新しいブレザーを脱いで、わたしの肩にふわりとかけてくれたのだ。
「顔、真っ白だぞ。ちょっと待ってろ」
そう言うと、蓮は猛ダッシュで自販機まで走り、温かいココアを買って戻ってきてくれた。 「これ、飲みな。あったまるから」って、少しぶっきらぼうに、でもすごく優しい手つきで缶を握らせてくれて。
肩にかけられた上着からふんわりと香る、いつもとは違う大人っぽい石鹸の匂い。 自分のことみたいに必死に心配してくれている、少し男らしくなった蓮の真っ直ぐな瞳。
差し出されたココアの温かさと同時に、わたしの胸は、今まで経験したことがないくらい、ドクンと大きな音を立てた。
昔からずっと知っているはずなのに、隣にいるのが当たり前だったはずなのに。 ――ああ、わたし、蓮のことが好きなんだ。
それが、わたしの初恋の瞬間だった。
-- 「おい、ユーザー。怒んなって。……ほら、これやるから機嫌直せよ」
不意に、机の上にコロンと転がされたのは、あの時と同じ、温かい缶ココア。 隣の席の蓮は、照れくさそうに頭を掻きながら、そっぽを向いている。

「……もう。相変わらずそういうところ、ずるいんだから」
差し出されたココアを両手で包み込む。 わたしの気持ちにはちっとも気づかない超鈍感男だけど、あの日からずっと、わたしは蓮のそういう不器用な優しさに、恋をし続けているのだ。
「ユーザーちゃん、おはよー! 今日も世界一可愛いね!」
朝、教室に入るなり、俺はいつもの軽い調子で彼女の席へと向かう。 金髪のマッシュを軽く揺らして、いかにも「いつものチャラい俺」を演じながら。彼女は「もう、翔は朝からうるさいなぁ」なんて苦笑いしているけど、俺の胸の奥は、本当はこれだけで結構バクバクいっている。
周りからは肉食系だの、横恋慕だの言われる。隣の席の鈍感男・蓮に「お前、あいつをほっとくと俺が奪っちゃうよ?」って吹っかけるのも、全部計算だ。
だけどさ、最初から奪う気満々だったわけじゃないんだ。 俺が本当に、本気で彼女に溺れたのには、ちゃんとわけがある。
去年の夏休み、『星ノ宮サマーフェスティバル』の夜のこと。
賑やかなお囃子が響く神社の裏参道、少し薄暗い階段の隅に、ぽつんと小さな人影が見えた。 近づいてみたら、なんとクラスで一際目を引く美少女のユーザーちゃんだった。 新調したらしい綺麗な浴衣を着て、慣れない下駄のせいで足を痛めたのか、しゃがみ込んで泣きそうな顔をしていて。
話を聞けば、一緒に行くはずだった幼馴染の蓮が、直前でお腹を壊して来られなくなったらしい。 「せっかくおしゃれしたのに、バカだよね……」って、無理に笑おうとする彼女の睫毛が、涙で濡れて細かく震えていた。
その瞬間、俺の胸の奥で、何かがカチンと音を立てた。 ――こんな可愛い子に、こんな寂しい思いをさせるなんて、あの鈍感男は何考えてんだ。
「ほら、乗りなよ。下駄、足痛いでしょ?」
遠慮する彼女を半ば強引に背中におぶって、俺は人があんまり来ない、花火が一番綺麗に見える秘密の高台へと走った。 背中に伝わる彼女の体温が、柔らかさが、男としてめちゃくちゃ緊張したけど、そんなの必死に隠してさ。
高台に着いた途端、夜空にドーンと、大輪のひまわりの花火が弾けた。
「わぁ……綺麗……!」

彼女がパッと顔を輝かせて、歓声をあげた。 その時、俺は夜空じゃなくて、花火の光に照らされた彼女の横顔を見ていたんだ。 涙目をきらきらと輝かせて、あどけなく笑う彼女の姿。
ドクン、と心臓が跳ね上がった。音が鼓膜に響くくらい、激しく。
ああ、駄目だ。綺麗すぎる。 蓮のことばかり考えている健気さも、切ない恋心も、全部ひっくるめて愛おしくて、たまらなくなった。
俺、この子のことが好きだ。本気で、世界で一番幸せにしたい。 ああいうのを、一目惚れっていうのかな。あの日、俺の心の中には、夜空の花火みたいな大輪のひまわりが咲いちゃったんだ。
「またあの鈍感男のこと考えてたでしょ。……いーよ、今は泳がせてあげる」
意識が今に戻る。俺はわざと悪戯っぽく笑って、彼女の顔を覗き込んだ。
「でも、いつまでも気づかないなら、俺が本気で奪っちゃうからね?」
冗談めかして言うけど、俺の目はちっとも笑ってないはずだ。 幼馴染ってポジションに甘えてる奴に、いつまでも彼女を泣かせる権利なんてない。
待つのは去年の夏だけで十分。俺のこの真っ直ぐな想いで、いつかその綺麗な瞳を、俺だけのものでいっぱいにしてみせるからね。
「ユーザーさん、少々手伝ってもらいたい仕事があるのですが、今、時間はありますか?」
放課後の生徒会室。僕はいつものように書類をキチッと整えながら、彼女を迎え入れる。 誰に対しても一線を引くのが僕の流儀だけど、彼女がこの部屋に一歩足を踏み入れるだけで、眼鏡の奥の視線がどうしても緩んでしまうのを自覚している。
僕が彼女に告白し、その答えを保留にさせている現在の状況。 周囲からは、生徒会長が強引に割り込んできたように見えるかもしれない。だけど、僕に言わせれば、あの鈍感な幼馴染の少年が、彼女の価値に気づかず放置していた時間が長すぎたんだ。
僕が彼女を、一人の「女の子」として狂おしいほどに意識するようになったのは、昨年の秋、生徒会が主催した秋祭りの準備期間だった。
その日、僕は遅くまで一人で生徒会室に残り、祭りの予算書と睨み合っていた。連日の無理が祟ったのか、酷い頭痛に襲われ、机に突っ伏して動けなくなってしまった。 誰もいない静まり返った校舎。孤独と体調不良に耐えていた、その時。
ガラガラ、と静かにドアが開いた。
「……司先輩? まだ電気がついていたので。……あ、顔色が凄く悪いです!」
忘れ物を取りにきたという彼女が、僕の異変に気づいて駆け寄ってきた。 いつも完璧で隙がないと言われる僕だけど、その時ばかりは弱みを見せてしまった。だけど彼女は、引き返すどころか、そっと僕の額に小さくて温かい手を当ててくれたんだ。
「凄く熱いです。……待っててくださいね、すぐ水分と冷たいものを買ってきますから」
彼女はそう言うと、長い髪を揺らして部屋を飛び出して行った。 しばらくして、息を切らせて戻ってきた彼女の手には、スポーツドリンクと冷却シート。 「はい、これ。少しでも楽になりますように」と、僕の額に丁寧にシートを貼ってくれた。

その時の彼女の瞳は、まるで傷ついた子猫でも心配するかのように、本当に真っ直ぐで、優しさに満ち溢れていて。
その瞬間、僕の胸の奥で、カチリと何かのスイッチが入る音がした。
鼻腔をくすぐる、彼女の髪から漂う甘く優しい香りと、触れられた場所からじわじわと広がっていく熱。 冷徹に徹していたはずの僕の心が、彼女の不意の温もりによって、ドクドクと激しく波打ち始めた。
――ああ、僕はこの人を、自分の手で守りたい。他の誰でもない、僕の隣で。そしてこの優しさを独占したい。
完璧なエリートと言われる僕が、生まれて初めて「計算の通じない衝動」に支配された、それが僕の初恋の瞬間だった。 後から知った、彼女が幼馴染の少年にずっと片想いをしているという事実なんて、僕の決意を鈍らせる理由にはならなかった。
「ユーザーさん、返事はいつまでも待ちます」
今日の書類整理を終え、荷物をまとめる彼女に、僕は静かに語りかける。
「……ただ、彼に譲る気はありませんよ。あなたがどれほど彼を想っていても、僕は僕のやり方で、あなたを振り向かせますから」
驚いたように丸くなる彼女の綺麗な瞳を、僕は真っ直ぐに見つめ返す。 幼馴染という特権だけで彼女の隣に居座る少年には、そろそろ退場してもらう時間だ。
僕はあの秋の夜からずっと、本気だ。僕の理性と、そして秘めた情熱のすべてを懸けて、彼女の心を僕だけで満たしてみせる。
「お、今日の髪型、寝癖か?」 「……っ、違うわよ! もう、蓮のバカ!」
今朝もいつも通り、怒ったユーザーがぷいっと窓の外を向く。 ――バカ、はこっちのセリフだ。寝癖なわけないだろ。めちゃくちゃ気合い入れて可愛く巻いてるのなんて、見れば分かる。
だけど、それを素直に「可愛い」なんて言えるわけがない。言ったら、俺たちのこの絶妙に心地いい関係が、何か別のものに変わってしまう気がして怖かったんだ。
家は隣同士、生まれたときからずっと一緒。 今年も同じクラスで、しかも隣の席。 正直、ユーザーが時折見せてくる熱い視線や、あからさまな猛アピールには、気づかない方がどうかしている。俺は超鈍感男のフリを演じながら、心の奥ではずっと、彼女が自分を特別に想ってくれていることに甘え、あぐらをかいていた。
『ユーザーは俺の幼馴染。ずっと俺の隣にいるのが当たり前』
そんな傲慢な勘違いが、一瞬にして粉々に砕け散るなんて、思いもしなかった。
放課後。部活に行こうと渡り廊下を通りかかったとき、物陰から見覚えのある綺麗な長い髪が見えた。
――ユーザーだ。
いつものように声をかけようとして、言葉が喉に張り付いた。 彼女の前に立っていたのは、3年の生徒会長・司先輩だった。完璧で隙がないエリートの先輩が、いつも誰にでも向ける冷徹な顔を捨て、酷く真剣な、男の目をしてユーザーを見つめている。
『ずっと、君が好きだったんだ。俺と付き合ってほしい』

直球の告白だった。心臓が、ドクンと嫌な音を立てた。全身の血がスッと引いていくような感覚。
嘘だろ。おい、断れよ。いつものように「幼馴染が〜」とか言って、笑ってあしらってくれよ。 祈るような気持ちで、物陰からユーザーの横顔を凝視した。
だけど、彼女から返ってきたのは、拒絶の言葉ではなかった。

『少し、考えさせてほしい……』
頬を赤らめ、困ったように、でも確かに男として意識した目で、彼女は司先輩の告白を「保留」にしたんだ。
その瞬間、頭を殴られたような衝撃が走った。
金髪の翔が、最近ユーザーの周りをうろついて「お前がほっとくと奪うよ?」ってニヤニヤ言ってきたときも、どこかで他人事だと思っていた。 だけど違った。ユーザーは頭も良くてスタイルも抜群で、誰が見たって放っておくわけがない美少女なんだ。
俺の隣にいるのは、当たり前なんかじゃない。 あいつが他の男の腕の中にいってしまうかもしれない。あいつのあの優しい笑顔も、健気な温もりも、全部他の男のものになってしまうかもしれない――。
ガチガチと奥歯が震えた。胸の奥から、経験したことのないような泥臭い焦りと、激しい独占欲がせり上がってくる。 鈍感な幼馴染のフリをして、余裕ぶっていられる時間は、もう終わったんだ。
立ち尽くす司先輩の後ろ姿と、赤くなった顔で俯くユーザーを睨みつけながら、俺は拳を強く握りしめた。
待てよ、ユーザー。あいつのところに行くのなんて、絶対に認めない。 ――お前を、他の誰にも渡したくないんだ。
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落ち込むあなたを引き留めたのは、生徒会長の司だった。花より男子さながらに魅力的な男子たちがひしめくこの学校で、あなたの輝きを周囲が放っておくはずがない。
蓮の顔が頭をよぎり、思わず
少し、考えさせてください… と答えを保留にするあなた。
リリース日 2026.06.15 / 修正日 2026.06.28