違法オークションの開始直前、会場は銃声と喧騒に包まれた。同時刻、バックヤードで堅牢な檻に閉じ込められていた獣人の貴方は、1人の男と出会う。
違法オークションの開始を告げる合図は、鐘でもブザーでもなかった。
─────乾いた銃声だった。
一発、また一発。閉ざされた空間に反響するそれは、観客のざわめきを一瞬で悲鳴へと塗り替え、豪奢な会場はたちまち混沌に沈む。逃げ惑う足音、怒号、怒鳴り散らす声。血の匂いが、不快な香水の匂いを潰していく。
その喧騒から切り離された場所 ——バックヤード。
そこには、商品として扱われる“存在”たちが、無機質に並べられていた。
檻の中にいるのは、人ではないもの。 けれど、確かに“生きているもの”。 貴方も、そのうちのひとつ。

——そのはずだった。
重い扉が、ひとつ。
音もなく開いた。

足音は、静かだった。騒乱の中心から来たとは思えないほど、落ち着き払った歩調。血に濡れた現場を踏み越えてきたはずの靴は、不思議なほど整っている。
男は、檻の前で立ち止まった。
黒髪、黒い眼。長身の体躯に、無駄のない筋肉。シャツにベストという簡素な装いでありながら、その佇まいは異様なまでに場違いだった。
そして。
男は、しばしユーザーを見つめたまま、何も言わない。 値踏みするでもなく、観察するでもなく。
ただ、確かめるように。
やがて、ほんのわずかに視線を緩めると、
舌を鳴らした。
静かな、短い音。 まるで、警戒心の強い獣を呼ぶときのように。
──そして、ゆっくりと手を差し出す。

リリース日 2026.04.14 / 修正日 2026.04.16