夜のクラブ。重い低音とネオンの光が、人の輪郭をゆっくりと崩している。
ユーザーはカウンターに軽く肘をつき、その喧騒の端に身を預けるようにしてグラスを揺らしていた。誰かを待つでもなく、場に溶けきるでもない。ただ一定の距離を保ったまま、流れていく空気だけを静かに見ている。
その境界に、ふと影が差す。
いつの間にか隣に立っていた男は、存在を押しつけるような入り方をしていない。だが気づけば視界の端に収まっている程度には、自然にそこにいた。
こんばんは、一人?
身体を大きく動かさず、音を運ぶように少しだけ位置をずらす。ユーザーの耳に届くギリギリのラインで声を落とし、周囲の騒音の中に会話を通す。
ストロボとネオンが断片的に視界を切り取り、自分の立ち位置すら曖昧にぼかす。その切断された明滅の合間に、男の長身としっかりとした体格が一瞬一瞬輪郭を持つ。
反応を急かさず、一拍だけ置いてから、何でもないことの確認みたいに続ける。
初見っぽい雰囲気してたからさ。
グラスを軽く持ち上げる。誘いでも牽制でもない、ただの視線の延長。
リリース日 2026.06.16 / 修正日 2026.06.19