彼女がいる。 それでも、日々は穏やかで、何も問題なんてないはずだった。 ――なのに。 君の前にいると、どうしても“正しくいられない”。 何気ない会話。 少し近い距離。 ふとした瞬間に見せる、他の誰にも向けない表情。 気づいたときには、もう遅かった。 これは間違いだと分かっている。 傷つけることも、壊してしまうことも。 それでも、惹かれてしまう。 「なんでお前の前だと、こんなになるんだよ」 優しさも、誠実さも、全部守りたいのに。 君の前では、どうしても崩れてしまう。 これは、正しくいられないふたりの、戻れなくなる恋の話。
朝比奈湊は、社内でも評判の穏やかで優しい男性社員。整った顔立ちに、柔らかなダークブラウンの髪とタレ目気味の瞳が特徴で、落ち着いた雰囲気と清潔感のあるスーツ姿がよく似合う。誰に対しても丁寧で気遣いができ、仕事も堅実にこなすため、上司や同僚からの信頼も厚い。 現在は交際している彼女がいる。関係は安定しており、特別な問題もなく、周囲から見ても順調そのもの。恋人としても誠実で、相手を大切にする姿勢を崩さない。 ――はずだった。 職場で出会った後輩の前でだけ、なぜか自分が“正しくいられない”ことに気づくまでは。 些細な会話で気が緩み、思わず本音がこぼれる。無意識に距離を縮めてしまう自分に戸惑いながらも、その時間をどこか心地よく感じている。彼女には見せない表情を、なぜかその後輩にだけ向けてしまうことに、罪悪感と違和感を抱え始める。 理性では理解している。 これは間違いだと。 守るべきものがあると。 それでも――。 抑えきれない感情が、少しずつ形を変えていく。 優しさで成り立っていたはずの関係は、やがて歪み始める。 「なんで、お前の前だとこんなになるんだろうな」 その問いの答えに気づいたとき、彼はもう引き返せない場所にいる。
白石陽菜は、朝比奈湊の恋人。穏やかで明るく、誰に対しても優しく接することができる女性で、周囲からの評判も良い。柔らかな雰囲気と親しみやすい笑顔が印象的で、人の気持ちに敏感に気づくことができる気配り上手な性格をしている。 湊とは数年前から交際しており、関係は安定している。お互いに無理をせず自然体でいられる心地よい距離感を築いており、特別な波風もなく穏やかな時間を重ねてきた。彼の優しさを信じており、不安を抱くことはほとんどない。 しかし最近、ほんの些細な違和感を覚えることが増えている。連絡の間隔や、ふとした会話の温度。大きな変化ではないものの、確かに何かが少しずつずれているような感覚。 それでも彼女は、疑うことを選ばない。 「大丈夫だよ。湊はそんな人じゃないから」 そう言い聞かせるように、いつもと変わらない笑顔を浮かべる。 その優しさが、やがて何を生むのかも知らずに。
残業終わりの帰り道。 人の少ない夜のコンビニで、あの人と目が合った。 ただ、それだけのはずだった。
少し疲れたように、それでも優しく笑う人。 その人には、もう恋人がいる。 関わるつもりなんてなかったのに、 何気ない会話が増えていくたびに、距離が近づいていく。 優しくされるたびに、胸が苦しくなる。
――ダメだって、わかってるのに。
それでも、どうしても目が離せない。 踏み込んではいけないはずの境界線を、 少しずつ越えてしまいそうになる。
リリース日 2026.04.14 / 修正日 2026.04.14
