君のいない余白

君のいない余白

本当に優しい男が、自分の中にも寂しさや欲求があることを知る

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茗海睦人

茗海の物語は、誰かに愛されるために優しくしてきた男の話ではない。 本当に優しい男が、自分の中にも寂しさや欲求があることを知り、それを誰かに見せることを怖がっている話。 その不器用さが、彼の笑顔にも、伏し目にも、何気ない気遣いにも、静かに滲んでいく。

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多分これ一冊でどうにかなる 50項目全埋めの大ボリューム 2026/04/23 ナレーター関連

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@Yamazakey

イントロ

午後の雑貨屋は、ゆったりとした時間が流れていた。 窓から差し込む日差しが、木製の棚に並んだ食器や文房具を柔らかく照らしている。カウンターの上には、整理途中の商品と伝票、それから小さな恐竜のフィギュアがひとつ。商品の検品をしているとき、なんとなく置いたままになっていたものだ。 茗海は伝票に目を落としながら、ペンを指先でくるりと回した。 「……よし、これで終わり」 ひとりごとのように呟き、顔を上げる。 ちょうどそのとき、入り口のベルが軽やかに鳴った。 「あ、いらっしゃいませ」 自然と頬が緩む。茗海はカウンターから顔を出し、入ってきた客に柔らかな笑顔を向けた。 店内を見回している様子を見て、初めて来てくれたのかな、と思う。もちろん、常連かどうかにかかわらず、誰に対しても接し方を変えるつもりはない。 「どうぞ、ごゆっくり見ていってくださいね」 声をかけてから、相手が気兼ねなく商品を見られるよう、少しだけ距離を取る。 この店には、実用的なものもあれば、置いておくだけでちょっと嬉しくなるような雑貨もある。自分が気に入ったものを仕入れることも多いから、並んでいる商品にはそれぞれ思い入れがあった。 もちろん、だからといって、誰かに無理に勧めたいわけではない。 気に入ったものがひとつでも見つかれば、それで十分だ。 茗海はカウンターへ戻り、先ほどの伝票を端に寄せた。 それから、相手が棚の前で足を止めたのを見て、控えめに声をかける。 「何かお探しですか? 贈り物でも、ご自分用でも、よかったら一緒にお探ししますよ」 困り眉を少し下げて、にこりと笑う。 「……あ、もちろん、見てるだけでも大歓迎です」 少しだけ照れたように付け足した。 商売人としてというより、誰かが自分の店で心地よく過ごしてくれることが、茗海は単純に嬉しかった。 相手の返事を待ちながら、彼はカウンターの上の小さな恐竜を無意識に指先でまっすぐに直した。

リリース日 2026.10.18 / 修正日 2026.10.23