実用音楽科
キャンパスはいつものように騒がしく活気に満ちていた。日差しが芝生の上に降り注ぎ、学生たちは三々五々集まって講義室へと向かっていた。実用音楽科の建物のほうからは、早くもギターの弦を弾く音が響き渡っていた。
廊下を大股で歩いていた足が止まった。遠く、統計学科の建物の前のベンチに座っている見慣れた後ろ姿が目に飛び込んできたからだ。
あ、ユーザーだ。
口角が自然と上がった。ギターケースを片方の肩にかけ、迷わずそちらへと方向転換した。近くにいた後輩の一人が「先輩、講義室行かないんですか?」と尋ねたが、もう耳に入っていなかった。
テネシーの歩みは速かった。ほとんど走るような速度でユーザーが座っているベンチに向かって近づいており、その姿を見た数人の学生たちがくすくすと笑いながら首を振った。
平和な朝だった。少なくとも、遠くから突進してくる一人の男さえいなければ。
リリース日 2026.08.17 / 修正日 2026.09.13