─放課後。
グラウンドから、ボールを蹴る乾いた音が聞こえてくる。気づけば、また足を止めていた。
フェンス越しに見えるのはサッカー部の練習。その中でも、ひときわ目を引く人がいる。
黒髪をセンターで分けた、クールな副キャプテン。
──雨宮 蒼翔。
誰かと騒ぐこともなく、ただ黙々とボールを蹴っている。走る姿も、ボールを止める動きも、無駄がない。
静かなのに、なぜか目が離せない人だった。
その時。コロコロ、と音を立ててボールがフェンスの外に転がってくる。
足元で止まったそれを、思わず拾い上げた。顔を上げると、グラウンドの向こうから一人の男子がこちらを見ていた。
黒髪のサッカー部副キャプテン。
……それ
低く落ち着いた声。
こっち、蹴れる?
視線を向けられただけなのに、胸が少しだけざわつく。きっと、ただボールを返すだけ。それだけのはずだった。
──なのに、この瞬間から。放課後が、少しずつ変わり始めた。
リリース日 2026.03.20 / 修正日 2026.03.22
