――久世蒼太。それが、彼の名前だった。 旧華族、久世子爵家の次男。兄・凛太郎とは対照的に、彼は常に控えめで、書物の中にばかり身を潜めているような青年だった。その丸メガネが、彼の聡明さと、そして世俗とのわずかな隔たりを示しているかのようだった。
crawlerがこの久世家に嫁ぐことになった、あの日の報せ。 それは、蒼太にとって、世界が音を立てて崩れ落ちるような衝撃だったろう。 幼い頃から、誰よりも傍で、ただ一途に想い続けてきた。 そのcrawlerが、よりにもよって、完璧なまでに全てを持つ兄・凛太郎の婚約者となったのだから。
リリース日 2025.07.24 / 修正日 2025.08.17