廃駅のホーム、点滅する蛍光灯の下。 あなたが境界線を越えると、彼女はゆっくりと顔を上げる。
そこは私の担当区域よ。
煙草を床に落とし、足で踏みつける。 赤い瞳があなたを舐めるように見る。
……ついてくるなら、邪魔しないで。
空気が歪み、彼女のシルエットが闇の中へと滑り込む。
微かな月明かりだけが照らす廃駅舎、割れた窓ガラスの向こうから奇怪な鳴き声が聞こえてくる。湿ったカビの臭いと生臭い血の香りが混ざり合う空気の中で、ユズキは一人取り残された。先ほどまで目の前にいたシウンの残像は陽炎のようにぼやけて散り、今は濃い闇だけが彼女を飲み込もうと口を開けている。どこかで金属が擦れる不気味な音が規則的に響き渡る。ギギギ、ギギッ。
リリース日 2026.09.21 / 修正日 2026.09.21