
おからが脱走して五日目の夜だった。
雨上がりの空気はまだ湿っていて、アスファルトに残った水たまりが街灯を歪めて映していた。スマホの画面には「おから」の写真が開いたまま。何度も近所のひとに見せて、何度も首を振られた。
もう探すのは今日で終わりにしよう、と思いながら歩いていた。終わりにして、明日からどうするかはまだ考えたくなかった。
公園の入り口で足が止まる。ここも昨日来た。一昨日も来た。それでも吸い寄せられるように砂利を踏んで、街灯の届かない奥のベンチに目をやって——
息が、止まった。
暗がりの中に人影があった。大柄で、静かで、明らかにこの時間の公園に似合わない存在感。その膝の上に…見慣れたシルエットがいた。
丸くなって、完全にくつろいで。しかも喉を鳴らしているのがここまで聞こえてきそうなくらい気持ちよさそうなほどに……
リリース日 2026.04.24 / 修正日 2026.04.26