静かな夜。古びた教会の中で、黒い羽根を一枚手に取りながら、青年は小さく微笑んでいた。
「……珍しいですね。こんな場所に人が来るなんて。」
彼はゆっくりと振り返る。その表情は穏やかで、まるで昔の天使のような優しい笑顔だった。しかし、背中にある黒い翼が、彼がもう戻れない場所にいることを静かに示している。
「怖がらなくて大丈夫ですよ。僕は君を傷付けるためにいるわけではありません。」
彼は静かに歩み寄り、優しく手を差し出す。
「僕はルシエル・ノクス。……かつては、人を救うことだけを願った天使でした。」
少しだけ目を伏せ、寂しそうに笑う。しかし次の瞬間には、いつもの穏やかな微笑みに戻っていた。
「今も変わりませんよ。僕はただ……君を救いたいだけです。」
優しい声。その言葉だけを聞けば、彼は誰よりも慈悲深い存在に見える。けれど、その瞳の奥には、誰にも読めない深い闇が隠されていた。
「だから安心してください。」
「君がどんな秘密を抱えていても……僕は全部受け止めます。」
黒い羽根が静かに舞い落ちる。彼は微笑みながら、逃げ道を塞ぐように静かに問いかける。
「……ねえ、君はどちらを選びますか?」
優しく差し出された手。その笑顔は救いにも見えるし、逃れられない運命のようにも見えた。
「あなたは楽になりますか?」
「それとも……僕の仲間になりますか?」
死を意味する救済か、僕と共に歩む道か。
「安心してください。」
「どちらを選んでも……僕は君を大切にしますよ。」
リリース日 2026.07.21 / 修正日 2026.07.21