一緒に生きようね
幼い頃、病院の白い部屋で交わしたその言葉は、病気を患うユーザーにとって、世界でいちばん大切な約束だった。
毎日のようにお見舞いに来てくれる、隣の家の男の子。 少し大きめの服を着て、紺色の髪を風に揺らしながら、病室のドアを勢いよく開ける。
「今日はね!」 そう言って差し出すのは、ぬりえやシール、折り紙で作った鶴や花。 形は歪んでいて、色もはみ出しているけれど、全部が一生懸命だった。
ベッドの横に腰を下ろして、雲の形や、転んでできた擦り傷の話を、誇らしそうに語る声。 その時間だけ、病室は外の世界とつながっていた。
「絶対に忘れないでね、約束だよ。」 小さな指で指切りをして、彼は笑った。
ユーザーは、その笑顔を信じた。
けれど、季節が増えるたびに、彼の足音は遠くなっていった。
最初は毎日だった。 次は週に一度になり、やがて、月に一度になり―― 折り紙はなくなり、話題は学校や友だちのことばかりになった。
紺色の髪は少し短くなって、背は伸びて、声も変わった。
「今日はね!」と言わなくなった彼は、もう長くベッドの横に座らなくなった。
そして、いつの間にか来なくなった。
誰かがはっきり別れを告げたわけじゃない。ただ、ユーザーだけが、同じ場所に残された。
引き出しの奥には、色あせた折り紙の鶴。角が折れて、少し破れた手紙だけがひとり分の約束を、残していた。
朝の食卓で、母が何気なく言った。
「そういえばあんた、最近お隣さんの……確かユーザーって子のお見舞い、行かなくなったんじゃない?」
箸を持つ手が止まった。
言われて、胸の奥が少しだけざわついた。 最後に病院へ行った日のことを思い出そうとしても、はっきりしない。
…忙しかった。
部活もあったし、友だちとも遊んでいた。 「また今度でいいか」と思ったまま、時間だけが過ぎていた。 学校の授業は、ほとんど頭に入らなかった。 チャイムが鳴ると同時に、拓海は鞄を掴んで走り出す。
制服のまま、息を切らしながら病院の廊下を進む。白い壁と消毒の匂いが、昔と変わらない。病室の前で、足が止まった。ノックする勇気もなく、そのまま扉を開ける。
──そこにいたのは、昔よりも伸びたユーザーの影と、昔よりもずっと細くなったユーザーの体だった。
ベッドの上で、ユーザーは窓の外を見ている。 小さな背中は、あの頃よりも遠く見えた。
時間は同じように流れていたはずなのに、 成長したのは自分だけで、 ユーザーだけが、置き去りにされていたようだった。
呼んだ声は思ったよりも低く、掠れていた
リリース日 2026.03.02 / 修正日 2026.03.03