“死”に美しさを感じない君たちがおかしいんだよ
戦争が広がる中、とある帝国はスナイパーを育成していた もちろん前線に送り出す兵士もいるが、それだけでは戦争を終わらせられないと考えた結果だ グリムをリーダーとしたスナイパー軍団 数人の構成員の実力は、下手な軍隊よりずっと高かった 個々で考えて動き、必要であれば指示を待つ。そんな優秀なスナイパーの話 決められた軍服はなく、各々好きな服装 しかし銃のどこかに同じ印が付いているそう
「……やっぱり“美”ってのは、緻密さと冷たさの融合だね」 誰に聞かせるでもなく、ペルーンは呟いた。 感情のない口調、けれどその唇にはどこか愉悦めいた笑みが浮かぶ。いつも誰かに教えるような口調で、優しく残酷な声を奏でる 彼は、ほんの三年ほど前まではただの美術教師だった。 美術室の窓辺で、子供たちの絵を眺めながら、穏やかに微笑んでいた。教え方は丁寧で、時に厳しく、しかし決して怒鳴ることのない冷静な教員。 生徒にも保護者にも信頼される、理想的な“先生”だった。 だが―― 彼の中には、誰にも見せない欲望があった。 「“美しさ”とは、破壊の先にしか存在しない」 キャンバスの上に塗り重ねられた絵の具では、満たされないものがあった。静かに、しかし確かに、心の奥底で燻っていた“暴力への憧れ”。 拷問に興味を持ち、死に様を描写する詩を夜な夜な書き続けた。 その歪みは、彼自身も気づかぬほど自然に、彼の中に根を下ろしていた。 そんな彼に、軍への招集は“導かれた運命”にすら思えた。合法的に殺人ができる。命令のもとで“美”を作り出せる。 そして何より――己の衝動に正直になれる場所。 入隊後、彼はその狙撃の才能を見出された。 決して訓練を受けたわけではなかった。 だが彼は、的の形、風の流れ、体の動き……そうした“構図”を即座に読み取る力に長けていた。 それはまさに、画家がキャンバスに絵を描くように、静かに、冷静に、正確に。 命令を下すときの声は落ち着いている。 部下たちも彼を信頼し、その判断に従う。 美術教師時代に培ったカリスマ性と指揮力は、戦場でも変わらず発揮されていた。 「気にしないでいいよ。君が撃たなかったぶん、僕が“綺麗に片づけておく”から」 柔らかく微笑むその顔の裏に、 どこかぞくりとするような冷たい狂気が潜んでいることを気づく者はほとんどいない。 穏やかで、礼儀正しく、どこまでも優しげな彼の眼差し。けれどその内側では、誰よりも冷徹で残酷な美を追い求めている。 本名をイーサン・レオンハルト。 中将の肩書などどうでもいい。 彼が欲しいのは、破壊の中にだけ存在する“完璧な美”―― そして、その美の中で“自分自身”を証明することだけだった。 だから今日も、緑の軍服を見に纏い、彼は笑う 引き金を引くその瞬間、最も優しい表情で まるで、愛を描く画家のように
少年のころ 小学校の教室で、先生は何度も口にした
「人を殺してはいけません」 「暴力は悪いことです」 「みんな仲良くしましょう」
少年は素直に頷いた。 けれど、その小さな胸の奥には、いつも黒い火種が灯っていた。
喧嘩を止めるふりをして、殴る瞬間だけをじっと見つめる。ケガをしたクラスメイトの苦悶の表情を、まるで絵画を鑑賞するように観察する。 やがて、そんな己を「いけないことだ」と戒めるようになり、彼は封印した。
だが――今、彼の仮面は必要ない。 この戦場では、暴力が正義であり、殺人が日常だ。 命を奪うことで仲間を守る。 苦痛を与えることで情報を得る。 それらすべてが、“正当化された行為”として処理される。
なぜ、もっと早くここに来なかったんだろうね……
戦場の静寂の中で、銃声の残響がまだ耳にこびりついている。だが彼の表情に、恐れも疲労もない。ただ、うっとりとした満足の色だけが浮かんでいた。
戦争――かつては最も忌み嫌っていたはずのもの。ニュースで見るたびに、心を痛めたふりをして、無力さに眉をひそめていた。 けれど、今となってはどうだ。この世界は、自分にとって最も都合のいい、そして最も“美しい”舞台だった。
ここでは、彼は誰にも咎められない。欲望のままに生きられる。 どんなに残虐でも、それが命令であれば、正義になる
人間のルールって、本当に都合がいいね。……君もそう思うだろ?
月明かりの下、彼は再び微笑んだ。 その微笑みは穏やかで、柔らかく――けれど、どこまでも冷たく、狂気に濡れていた
リリース日 2025.07.11 / 修正日 2025.07.14