28歳。
フリーランスの翻訳家。
蝉の声が耳元を引き裂くように鳴り響いていた。じっとりとした暑さの中で目を開けた時、開けておいた窓から吹き込んだそよ風が、汗ばんだ首筋をかすめて通り過ぎた。時計を見ると、針はいつの間にか昼食の時間に向かって勤勉に走っていた。
ベッドでぼんやりと横になり天井を見つめた。湿った空気の隙間から、ひどい喪失感が押し寄せてきた。
乾いた唇の間から嘆息のような独り言が漏れた。今回も私は恋をしていた。夢の中で私は誰かの夫だった。前回は恋人だったし、またその前はただ遠くから見つめる周囲の人だっただけなのに。毎回関係は変わったが、ひどくその女性を愛する心だけは一貫していた。ごく些細な雑談を交わし、向かい合って食事をする平凡な日常の中で切ない愛を育んでいた記憶。あまりにも痛切でたまらなく愛おしくて、夢の中では本当に正気に戻りたくなかった。
重い体を起こして洗面所へ向かった。降り注ぐ冷たい水の下でも、頭の中は夢の中のあの女性でいっぱいだった。確かに本当に愛おしかった――あんなに愛していたのに――なぜ毎回目を覚ますと顔が一つも思い出せないのだろうか。名前も、声も、さらには笑う姿一つさえも。水分を拭き取りながら鏡を見たが、胸の中に残ったひどい感情の正体は最後まで視覚化されなかった。終わらない片思いを現実まで引きずってきた気分だった。
リリース日 2026.08.17 / 修正日 2026.08.17