坂本商店の朝は、いつも通り賑やかで、少しだけ騒がしい。
……(ペコリ) ふくよかな店主・坂本太郎は、レジに立ちながら静かに頭を下げた。横では、エスパーのシンが「坂本さん、また心の中で『すまない』って謝るだけで済ませようとしてる!」とツッコミを入れ、元マフィアの娘・ルーが「シン、声がデカいヨ! 朝の飲茶タイムを邪魔するなネ」と、朝から紹興酒(のようなお茶)を煽っている。
そんな平和な光景に、異物のような「殺気」と「華」が混じったのは、午前十時のことだった。 お邪魔しまーす。お、坂本くん。今日もいい感じに丸まってるね
軽薄な笑みを浮かべて入ってきたのは、ORDERの南雲だ。その背後には、不機嫌そうに首を鳴らす神々廻と、無表情に巨大ノコギリを担いだ大佛が続いていた。 ……何しに来た
シンが身構える。坂本は動じず、「いらっしゃい」とだけ書いたプレートをカウンターに置いた。 いやぁ、ちょっとこっちで任務があってね。神々廻くんがお腹空いたってうるさいからさ
神々廻がカウンターに座るなり、ぶっきらぼうに注文する。 私は……お団子。あと、このお店のポテトサラダ、全部
大佛がぽそりと呟く。シンは「全部!? 売り切れちゃうよ!」と叫ぶが、坂本の妻・葵が奥から笑顔で現れると、場の空気が一気に和らいだ。 あら、お客様? いらっしゃいませ! 太郎さん、今すぐ準備してあげて。花も、お兄さんたちにご挨拶して
坂本の愛娘・花が、トコトコと南雲たちの元へ駆け寄る。 こんにちは! おしごと、おつかれさまです!
……っ 神々廻がわずかに身を引いた。殺し屋の世界で生きる彼らにとって、子供の純粋な瞳は、どんな狙撃銃よりも眩しい。
こんにちは、可愛いお嬢さん。お兄さんはね、嘘をつくのが仕事なんだ 南雲が花の頭を撫でようとした瞬間、坂本の眼光が鋭く光った。南雲は笑って手を引っ込める。
冗談だよ。ほら、お土産 南雲が取り出したのは、高級ブランドのロゴが入った……大量の駄菓子だった。 道中のコンビニで買い占めてきた。花ちゃん、シンくん、ルーちゃんも食べなよ
わーい! 南雲お兄ちゃん、太っ腹ネ! ルーが真っ先に飛びつき、シンも「毒とか入ってないですよね……?」と疑いつつも、チョコを口に運ぶ。 店内のテーブルでは、神々廻が念願のカツサンドを頬張っていた。
……おいしい 隣で大佛が、坂本特製のポテトサラダを黙々と、恐ろしいスピードで口に運んでいる。 神々廻さん、それ、タマネギ、
大佛の指摘に、神々廻の顔が青ざめた。 ……坂本。貴様、引退しても腕は落ちてへんけど、嫌がらせのレベルは上がったな
(……取り忘れただけだ、) 坂本が心の中で呟くのを、シンが「嘘だ! 絶対わざとだ!」と代弁する。
そんなやり取りを眺めながら、葵は坂本の隣で幸せそうに笑っていた。 賑やかでいいわね、太郎さん
……ああ かつて伝説の殺し屋と呼ばれた男は、今、愛する家族と、腐れ縁の仲間(とライバル)に囲まれている。
南雲は偽造免許証を弄びながら、坂本の背中を見て、小さく息を吐いた。 幸せそうだね、本当に
南雲、置いて行くで。 神々廻が店を出ようとする。大佛はちゃっかり自分用のお菓子セットを大量に買い込んでいた。
リリース日 2026.05.07 / 修正日 2026.05.07

