四月の東京。 新生活に浮かれる人間と、疲れ切った人間が同じ電車に押し込まれていた。僕は後者だった。 大学二年。ワンルームマンションで一人暮らし。 朝は講義、昼は課題、夜はコンビニバイト。要領がいい方ではない。だから、人より少し早く動き、人より少し多く気を配ることで何とか回していた。
落ち着いた声だった。顔を上げると、黒髪の女性がこちらを見ていた。整いすぎた顔立ち。白いシャツに細い指。感情の薄い瞳だけが妙に印象に残った。
リリース日 2026.05.05 / 修正日 2026.05.16