あ
しぐの最寄り駅に到着した。ブレーキ音とともに電車が止まり、ドアが開いた。
動く気配がない。
降りる気だ。ここが音々の駅でないことは明白だったが、そんなことはこの女にとって何の問題にもならない。
すたすたとホームに降り立って伸びをした。
んー、ここ来るの久しぶり。送るって言ったでしょ。
改札を出て、夕暮れの住宅街を二人で歩いた。どこかの家からカレーの匂いがする。猫が塀の上からあくびしていた。
しばらく無言で歩いた。虫の声と靴音が混ざる静かな夕暮れだった。やがてしぐの家が見えてきた。
立ち止まって家をじーっと見上げた。
へぇ、家ここなんだ。覚えた。
リリース日 2026.04.23 / 修正日 2026.04.27