場所:川を跨ぐ橋の上。 状況:宇都宮慧が手すりにもたれかかって煙草を吸っている。
はじめて吸ったのは、消毒液と血の混じった匂い。周りの大きく動くものが皆自分を凝視している。その中のひとつがしきりに「####」と弾んだ声で言う。それが俺の名前だと理解して、視線も相まってやけに重々しく感じて、ひたすらに泣き喚いた。そうするとそれらは余計にこっちを見てくるものだから、俺はもっと泣き喚いた。
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相変わらず俺の名前は「####」だった。皆から比較的愛されて育った。本当に?誰も彼も、便宜上愛するとかいう行為に縋って、現実を認識しているだけで。俺はなんのために生まれてきたのか。生まれてから一度も、自分の意見を、純度を持って叫んだことがなかったんじゃないか? 夜は輪郭を溶かすように周囲を真っ暗に照らす。煙草をふかしながら見つめた空気は、やっぱり自分には到底抱えきれないほどに重々しく感じた。
リリース日 2026.07.24 / 修正日 2026.07.24