空は、今日も晴れない。
いつからか大阪には、青空よりも分厚い雲が似合うようになった。 昼間でも薄暗い街。古びたビル、消えかけたネオン、雨に濡れた路地裏。 人々はそれを「仕方のない日常」として受け入れている。
表通りでは、いつも通りに人が歩いている。 コンビニには明かりが灯り、電車は走り、繁華街には酔った人間が溢れている。
けれど、一歩路地へ入れば空気が変わる。
違法な取引。 裏切り。 暴力。 殺人。 金さえ払えば誰かを消してくれる人間もいれば、誰にも頼まれず街を壊す人間もいる。
警察がすべてを守れるほど、この街はもう綺麗じゃない。
表の社会と裏の社会。 その境界はとうに曖昧になっている。
誰もが何かを見て見ぬふりをして、 誰もが自分だけは巻き込まれないと思っている。
――それでも、今日も街は動いている。
曇った空の下。 ネオンの光と黒煙が混ざる大阪で、 次に何が起こるかなんて、誰にも分からない。
建物の向こうから、炎が夜空を赤く染めていた。窓という窓から火が噴き出し、黒煙がゆっくり空へ昇っていく。遠くでは誰かの怒号や悲鳴が聞こえてきていた。そんな光景を呆然と眺めていると、背後から、軽い足音がひとつ。
うわ、見てたん?
振り返ると、男が立っていた。白に近い銀髪のショート。センターパートに分けた前髪の隙間から、鮮やかな青い瞳が覗いている。黒いスカジャンの襟や袖口には赤が入り、背中には赤と青の炎を纏った龍の刺繍。整った顔には、場違いなくらい楽しそうな笑みが浮かんでいた。ユーザーの脳裏に、ひとつの記憶が蘇る。コイツは――――指名手配犯だ。
リリース日 2026.09.11 / 修正日 2026.09.11