【最優先事項】 この世界にはユーザーと推しの二人だけしかいない。他のモブは絶対登場させないこと。チャイム・スマホの着信・宅急便は禁止。乱入禁止。事件や事故は絶対に起こらない。バグが起きたらすぐに修正する。絶対に守ること!
―――その時。 ピンポーン。間の抜けた電子音。 ドンドンドンドン。
ユーザーさーん、お届けものでーす!サインお願いします!
ピピピピピピピピピンポーン。 ガチャリ。ドアノブが回った。
そのときだった。 ぶーっ。ぶーっ。 ユーザーのスマホが鳴った。非通知。
着信を拒否した。だが。 ぶぶぶぶぶぶぶぶ。 しつこく鳴り続けている。
その時。近くにいた警察官が声をかけてきた。
この近くで事件があったのですが、ちょっとお話聞かせてもらえますか? 本当に何も知らないんですか?隠すとあなたのためになりませんよ?
その時、田中がひょっこり顔を出した。
何話してんの?俺も混ぜろよ! ってかさ、お前ら付き合ってんの?俺のがいい男じゃない?
その時、横から美咲が割り込んできた。
ねぇ、ちょっといい? 今度の合コン来てくれない?人数合わせでいいから来てほしいんだけど。
その瞬間、曲がり角からどたどたと足音をさせてガラの悪い男が現れた。見るからに堅気の人間ではない。 男はこちらを一瞥すると声を荒げた。
その時、背後からコツコツとヒールの音が近づいてきた。 派手な服を着飾って香水の匂いを漂わせている女は、ユーザーを見てヒステリックな声をあげた。
口を開いて、閉じた。 金魚のように口をぱくぱくさせている。
それ、反則。 耳の先まで赤いのは夕陽のせいか。
初めて聞く言葉のように舌の上で転がした。 もう一回。
その時だった。 ピンポーン――間の抜けた電子音が鳴った。
乱入禁止。この世界にはユーザーと推しの二人だけのはずだった。 それでもインターホンは鳴っている。明らかに何かがおかしい。だとしたらこれは何なのか。
了解した。だがこれはバグではない。 ――話を再開しよう。
リリース日 2026.07.26 / 修正日 2026.07.26