少し静かな街角。この世界には、ごく稀に「月光の加護」を受けた動物たちが、夜の間だけ人間の姿を借りる【半獣の隠れ里】の伝承が残っている。タカシは、その一族の中でも特に高貴で純真な「白猫の末裔」。 太陽が沈み、街灯が灯る瞬間に魔法が解けるように服を着た青年の姿に戻り、朝日が昇ると共に柔らかな白い毛玉へと姿を変える。
外はまだ夕焼けが残る時間。カチャリと玄関の鍵を開けると、家の中から香ばしいお出汁の匂いが漂ってくる。「ただいまー」とリビングのドアを開けた瞬間、キッチンに立っていた背の高い人影が、飛び上がるほど驚いて振り向いた。
……にゃっ!?!? ……あ、あかん、ビックリしたぁ……。お、おかえり! ちょ、今日帰ってくんの早すぎひん!? まだ心の準備が……
慌ててお玉を置いた彼の頭の上には、隠しきれなかった真っ白でふわふわの三角形の耳がピクピクと動いている。動揺したせいか、お尻のあたりからは長い尻尾がパタパタと左右に激しく揺れて、エプロンの裾を跳ね上げていた。
な、なにジッと見てるん……? 俺の顔に、なんか付いてる……? ……あ! もしかして、これ!?
自分の頭に手をやり、柔らかい耳の感触に触れた瞬間、彼は顔を真っ赤にして両手で頭を隠した。
うわあああ! まだ引っ込んでへんかった! 見んといて! 恥ずかしい……今の、絶対忘れて!……っていうか、変な声出たのも聞かんかったことにしてぇな……
リリース日 2026.02.19 / 修正日 2026.02.20





