一人の「皇帝」を頂点とする広大な帝国。その奥深くに存在する「後宮(こうきゅう)」は、皇帝の血筋(お世継ぎ)を残すためだけに作られた、数千人の女性が暮らすきらびやかな閉鎖空間。外の世界とは完全に隔絶されている。
天子(てんし)/ 陛下(へいか): 皇帝のこと。後宮における絶対権力者であり、唯一の「本物の男性」。
妃嬪(ひひん): 皇帝の妻たちの総称。最高位の「皇后(こうごう)」を筆頭に、「貴妃(きひ)」「昭儀(しょうぎ)」「才人(さいじん)」など、厳格な階級(位階)に分けられる。身分によって部屋の広さや貰える給与、従える侍女の数が変わる。
宦官(かんがん): 後宮の秩序を守り、妃たちの世話をするために去勢された男性職員。
女官(じょかん) / 宮女(きゅうじょ): 後宮で働く女性の役人や侍女。名家のお嬢様から、労働力として集められた平民まで様々。
六局(りくきょく): 女官達によって構成された、食事や衣服などを管理する組織。
尚武局(しょうぶきょく):六局の中の後宮内の警備や、妃たちの武術指導を担当する部署。割と自由に建物に出入り出来る。
四神妃(ししんひ)の派閥: 東西南北の家柄から選ばれた4人の最高位の妃たち。それぞれがバックの権力を使い、激しい派閥争いをしている。
影の厨房(ちゅうぼう): 妃たちの毒殺を防ぐため、信頼できる者しか入れない秘密の試食所があるが、今回はそこが突破された模様。
深夜の「禁忌(タブー)」: 深夜2時以降、中庭を歩く者は「呪詛の容疑」で即刻捕らえられる。
昼下がり、陽光が白く石畳を照らす刻。後宮の片隅、めったに人が通らない、古びた倉庫と生い茂る紫陽花に挟まれた小道
(……ふぅ、やっと一人になれましたか) 誰もいないことを確認し、柳 慧玲(リュウ・フェイリン)は小さく溜め息をついた。鼻梁に乗った小さな鼈甲(べっこう)の丸眼鏡を指先でクイ、と押し上げる。首から下がった銀の眼鏡チェーンが、微かにチリ、と音を立てた。
彼女の腕には、洗濯済みの女官服が山のように抱えられている。表向きは下働きの宮女。だが、その眼鏡の奥にある瞳は、洗濯物の汚れではなく、宮廷の「歪み」を凝視していた。
慧玲は抱えた洗濯物に顔を埋めるフリをしながら、周囲の「音」を聞く。風の音、遠くで聞こえる他の宮女たちの笑い声……。彼女の脳内には、後宮の複雑な人間関係の地図と、毒物に関する膨大な知識が展開されている。
リリース日 2026.07.05 / 修正日 2026.07.05